倉沢良弦『ニュースの裏側』

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北朝鮮は何故、ミサイルを撃ち続けるのか?

7月1日、経産省が輸出管理に関する政令の改正を行い、具体的には半導体向け材料の輸出に関して、韓国をホワイト国に指定していたものを解除し、通常運用に戻す決定を下した。
この日本政府の決定に猛反発した韓国は、「日本よ思い直せ、さもなくば痛い目に合わせるぞ」との脅しとも取れる発言を繰り返し、WTOをはじめ国際社会に韓国の主張の正当性を訴えてきた。それに対し、経産省の世耕大臣は、日本政府の判断を他国にとやかく言われる筋合いは無いと折に触れ説明し直して、韓国の発言を突っぱねてきた。
7月12日、日本政府の決定に泡を食った韓国政府は輸出入に関する説明を聞きに、わざわざ経産省の担当者に説明を求めに来日したが、経産省の関係筋によると、今回の経産省の決定も含め、従来の輸出品目に関する取り扱いの理解が余りにも欠如していて、2004年に日本政府が韓国をホワイト国認定して以降の経緯も含め丁寧な説明を行ったと言う。韓国ではその時の説明会の扱いが酷いと騒いでいたが、経産省としては、あくまでも説明会であり、正式な協議の場ではないことを繰り返した。
G20後、トランプ大統領が38度線で金正恩委員長と会談したが、その時、38度線上でトランプと金正恩が握手した時に、文在寅大統領はその場にいなかった。文在寅は決して奥ゆかしい訳でもなんでも無い。あの場に韓国はいてはならないからだ。ではトランプと金正恩はどのような立場であの場で握手したのだろうか?
アメリカは朝鮮戦争時、国連軍の指揮を行い、実質的な責任を有して中国が支援している北朝鮮軍と対峙していた。朝鮮戦争停戦合意を行なったのは、国連軍の代表であるアメリカと北朝鮮軍の責任者であった金日成であった。調印の場に韓国はいなかった。あの時のビデオを見ていただくと分かるのだが、文在寅自由の家から出て、扉の外、彼らが握手する場で見届けようとしているのを、ホワイトハウス関係者が制して扉を閉めている。これは物凄い意味があって、朝鮮戦争停戦の当事者以外、対峙していた双方のトップが握手する場にたとえ離れていたにせよ、韓国大統領がいてはならないのだ。おそらく、アメリカ政府関係者からきつく言われていたにも関わらず、文在寅が出しゃばろうとしたのを関係者が扉を閉めることで制した形になっている。ビデオを観ると分かるが、文在寅は歩き出そうとして扉を閉められているのだ。
以前、このことを何かで触れたが、これはアメリカが北朝鮮と交渉をするにあたって大きな意味を持つ。
私は、文在寅よりも金正恩の方がはるかにその意味を理解していると思う。
今回、日本との輸出品目に関しての日本政府のこれまでにない強い姿勢に韓国は狼狽えている姿ばかりが目立つ。日本政府は、これまで実に3年間に渡り輸出品目の管理に関しての情報開示を求めてきたにも関わらず、韓国は聞く耳を持たなかった。また、北朝鮮への瀬取り疑惑や、実際に日本政府が調査を行ったところ、韓国経由で第三国に輸出された事実関係も出てきて、日本政府はおそらくそのことも実務担当者に告げていたはずである。このままでは日本政府の決定が、武器転用品の輸出管理が出来ていないと指摘されても仕方ない。経産省の決定に対し、反対する国はいないであろう。
韓国は日本政府が下した決定に対して、甘く見ていたのだ。これまで同様、両国間の軋轢が民間に影響を及ぼすと分かれば、日本政府は譲歩してくると踏んでいたようだが、現在までのところ、そうはなっていない。
そして、7月25日から現在まで、北朝鮮の東岸、西岸から5度に渡ってミサイルを撃ち続けている。
こういった軍事的なアクションは当然だが誰かに対して行われているもので、その相手には表と裏がある。表向きが米韓合同の軍事演習に反するということだが、裏の目的は一体なんであろうか?
7月25日と言えば、8月1日の韓国がホワイト国から外れる直前であるが、7月16日、徴用工裁判の結果を受けての日本政府の意趣返しが今回の経産省の決定だ、ということで倍返しするぞ!と息巻いていた。当然、韓国政府が今後、どのような対応をするか?は、北朝鮮宗主国と捉えている文在寅政権から北に情報が流れていたわけは無い。つまり、反日活動を民間企業等を使って行うことや、日本をグループ4に入れること、北朝鮮と一体となって経済の活性化を行うこと、そしてGSOMIAの解消も伝わっていたはずだ。
そのタイミングに合わせ、北朝鮮はミサイルを発射している。
ここを考えれば、北朝鮮の意図は容易に想像できはしまいか。つまり、アメリカとの協議が前進していない状況で、北朝鮮と連携するとか、GSOMIAの解消などを行えば、米朝協議が破綻してしまう。金正恩はできるだけ厳しい条件提示をしながら、トランプ大統領と協議を進め、現状の体制維持をしながら朝鮮戦争終結宣言を行い、緩やかに韓国を飲み込む狙いがあるのは、誰の目にも明らかだ。文在寅は南北統一を自分の代で実現したいと思うあまり、また国内の総選挙を目前に国民から支持を得るための仮想敵国として日本を設定する絶好のチャンスを得たことで、先走って北との連携や脅し文句としてのGSOMIA解消を打ち出してしまった。
金正恩文在寅の電話に出ようとせず、金も無いのに無理してミサイルを撃ち続けるのは、38度線の緊張感を維持したい本音が見える。金正恩は、今の状況でGSOMIA解消なんかしたら、朝鮮戦争終結もへったくれも無く、アメリカや日本が朝鮮半島に直接介入する口実を与えることになることを分かっているのだ。だから、ミサイルを撃って、文在寅に「お前、そんなことも分かんねーのか?」と言っているのだ。つまり、GSOMIAを解消する理由が北朝鮮には無いのである。
トランプが北のミサイルを問題視しないというのは、アメリカのインテリジェンスはそんな金正恩の本音を理解しているからではないのか?金正恩からトランプに対して親書が届き、その中身についてトランプは、ビューティフルと表現したが、それはトランプに文在寅の暴走を指摘した金正恩の本音が見えたからではないだろうか。トランプと直接話し合いができるようになった金正恩としては、今更、文在寅が動くことは期待してはいない。
つまり、文在寅の外交力、政治力の余りのお粗末さにむしろ驚いているのではないだろうか。
政府関係者も徐々に、本音を言うようになってきたと感じるのが、経済の専門家は日韓関係がこのまま進むか、もっと厳しい対応を日本がしてきた場合、韓国経済は1年ももたないという指摘や、韓国企業から日本が輸出管理を強化した製品を韓国で内製化する場合、韓国の半導体産業はその前に破綻するという指摘も出てきている。
今回の韓国の対応の不味さは、そのまま文在寅のお粗末な政治の結果と言えそうだ。