倉沢良弦『ニュースの裏側』

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74回目の8月15日

法政大学の山口二郎教授が、何とも不可解で意味不明な文章をハンギョレ新聞に寄稿した。
曰く、日本は先の大戦において無意味な対米戦争をしかけ、アジア諸国に多大な犠牲をもたらしたという、これまでと変わらない論理だ。
また、戦艦大和の乗組員の手記を引用し、誰の目にも明らかだった日本の敗戦を機に、日本は新たな道を歩むというその文言を現在の日本亡国論になぞらえて引用するあたりに、悪意とは言わないが、日本国民の歴史観とは相容れない異国情緒を醸し出している。
既出の書籍の中にある臼淵大尉の言を引用するにしても、軍人としての発言は、当時の時代背景から見てもその発言内容にはそれ相応の注意が必要で、軍事裁判ものの発言とも取られかねない中で、若い兵士に自分たちが出征する意味を問うたものであろう。負けると分かっている戦いに臨まなければならない兵士達は、むしろそのことによる戦争終結への思いしか無かったのではないか?彼らの胸に去来したものは、里に残してきた家族や既に鬼籍に入った仲間たちへの思いであり、靖国で会おうという思いだけだったのではないだろうか?
最前線からの帰還者の多くは、戦場にいて怖いものなど無かったと、一様に言う。それほどの覚悟の中での出陣であったろうし、戦争自体を終わらせるためにこそ、その出征の意味を見出していたはずだ。日本軍はどの部隊も敵とは死力を尽くして戦うが、一旦捕虜にすると、相手を立派な一兵士として扱う。日本に併合した韓国や台湾の兵士とは、共に酒を酌み交わし同胞として迎え入れる。その類には伝聞めいたものも多いが、実際に日本兵として戦った経験がある現存者の多くは、日本軍の規律の正しさ、他者を敬う行為、略奪や暴漢を行わなかったことを記録として残している。
山口教授の歴史観を否定するつもりも無いし、彼がどの立場で発言するのかにも興味は無いのだが、いかに思想信条の自由が許されているとは言え、政府主導で反日運動を進めている韓国の新聞に寄稿するにしても、相手国の主張に沿った文章は如何なものかと思われても仕方がない。
日本人の多くは、山口教授が反体制派の集会でアジテートする姿で、彼がどのような立場で発言を繰り返しているかは知られているが、韓国で同教授の評価が正しく行われているかは、甚だ疑問だ。
むしろ、先の参院選で日本の著名なジャーナリストという触れ込みでドイツで紹介された、芸人とおなじように日本の著名な歴史学者とか何とか報じられてしまっていては、更なる誤解を生み出しかねない。
山口教授がずっと、反体制的な発言に終始するのは、それなりの理由があるのだろう。それこそ、知識人は反体制的であれ、という昭和の時代の名残でしかない。大学教授という肩書きなんだから、もう少し時代背景や歴史観を整えた上で、発言してほしい。
あれでは他国に誤解を与えてしまう


http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/34127.html
ハンギョレ新聞記事