倉沢良弦『ニュースの裏側』

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Chinaショック、違ったChina自身がショック

米中貿易摩擦の緊張感は、依然として継続したままだ。G7サミットにおける日米貿易交渉の中で、日本はアメリカの余剰トウモロコシを買うことを承諾した。これに一番の衝撃を受けたのが、当たり前だがアメリカとギリギリのやり取りを行なっているChinaだろう。トウモロコシをはじめアメリカ産農産物を取引材料にしておきたかったChinaとしては、揺さぶりが揺さぶりにならないことに苛立ちを感じている。
加えて、習近平のアキレス腱になりそうなのが、香港だ。中国人民軍は通常の兵役交代であると称して、香港に大量の兵士を送り込んでいる。正に一触触発の様相が高まってきた。また軍部が介入の口実に使うために送り込んだ工作員も、様々なメディアで暴露されていて、軍部の意図が裏目に出ている。共産党内で一枚岩とは言えない習近平は、内憂外患状態に置かれている。
さらに習近平を苛立たせているのが、韓国の文在寅大統領ではないだろうか。国際社会の信頼を失墜させる政策を次々に打ち出している韓国大統領府は、朝鮮半島情勢で一番協力関係にいなくてはならないChinaの立場をも蔑ろにしている。北朝鮮はChinaにとっての緩衝地域以上の意味は為していなかったのは、つい最近までの話であって、米朝交渉はChinaの立場おも揺るがしてきた。金正恩は現状の体制維持さえ出来れば、外資が入ってこようが、Chinaが文句を言ってこようが意に介さないという態度を見せている。それは、金正恩にも言い分があり、米朝協議の進展にChinaは興味を示さなかった。いや、示せなかった。商売人のトランプのやり方を利用した金正恩は、自分が手玉にとっているくらいに勘違いしているのではないだろうか?つまり、米朝協議と米中貿易交渉の両方を利用していることになる。
ただ、それだけなら習近平は文句は無かったろうが、そこに日韓関係の悪化を目論む文在寅が割り込んできた。米朝交渉と米中貿易の問題を天秤に掛けて利用したかった習近平としては、文在寅が前後見境なく行なっていることは、習近平の思惑を全て水疱に帰するほどの効果がある。習近平は、バカにつける薬は無いと呆れているだろう。まして、最大の輸出相手国であるChinaの意向にそぐわないやり方は、「自分の立場が分かっているのか?」とも言いたいはずだ。
日米韓の関係が壊れることは、中韓関係の崩壊も意味する。外交はそれらの思惑で動いているので、国のトップが二手三手先を読めていないと、現在の韓国民のように、未来絵図が地獄にしか見えなくなるのだ。
更に前述のトウモロコシはトウモロコシだけに止まらない。日本は急激にアジアへの融資を拡大している。これは、Chinaにとっては一帯一路をも揺るがす事態に発展するだろう。Chinaがアジア諸国をはじめアフリカや西アジアに投資や融資を行う場合、その条件はドルによるものであることだ。つまり、名ばかりの国際通貨である人民元など、誰も欲しがらない。産業振興が進まない途上国や、太平洋上の小国くらいのものである。しかも、それらの国に人民元決済で融資を行い、払えなければ港湾使用権等を人質に差し出さなければならない。それら、Chinaの高利貸しのようなやり口を見た国際社会は、日本円にシフトするのは当然だ。
しかも、日本円の信任はドルに次ぐ。日本円で融資し、日本円で決済できるのだ。これが、どれほどの経済効果をもたらすか?は推して知るべしだ。経団連が表向き、韓国経済の影響を懸念すると言いながら、実はその裏側で日本政府が進めるアジアのインフラ整備に触手を伸ばしている。そのような裏での話が出来ていることなど、素人でも容易に想像できることだ。経団連は政権と反目しているというのは、ただのブラフに過ぎない。例えば、春闘にしても特定野党に配慮しているフリで国民の溜飲を下げさせておいて、裏では政府と協力して、過度に日本の内需に影響が出ないような形での人件費を上げることを模索している。
余談だが、これのネックになっているのが、強すぎる円とも言える。円高傾向にあるのは、現状であまり良いことではない。これが、企業が設備投資やベアに及び腰になっている理由だろう。
アジアへの自国通貨融資が可能であり、資金が潤沢にある日本は、Chinaにとって獅子身中の虫以外の何者でも無い。人民元融資が出来ないChinaは、ドルを使うしかない。そうなれば人民元安が進行する。
アメリカが通過操作国だと指摘したのは、正にこの点にある。つまり、安倍総理トランプ大統領は、そうやって東アジアの情勢の安定に向けて、陰に陽に締め上げているのだ。韓国の文在寅が騒いでも、実はそれはとるにたらないことでしかない。東アジアの安定にはChinaを抑え込むのが、一丁目一番地とみるべきだろう。