倉沢良弦『ニュースの裏側』

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非常事態宣言の衝撃は逆に作用したのか?

日本時間の3月14日早朝、トランプ大統領はCDC(疾病対策センター)、NIAID(国立アレルギー感染症研究所)、その他の対新型コロナウイルス対策チームを従え、疾病対策では異例となる国家非常事態宣言を行った。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200314/k10012331021000.html

Trump declares national emergency over coronavirus https://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-51882381

https://apnews.com/1b15b2f3f0b01eb66ea8116ff70bcb30

アメリカは、連邦政府よりも各州の自治権、州法が協力に機能しているため。今回のような非常事態に陥った場合、連邦政府の強力な権限を発動させるには大統領権限で非常事態宣言を行う必要がある。
それでなくても、今回の新型コロナウイルス対策が州ごとにバラ付きを見せ始めたことと、株式市場と為替市場に大きな影響が出ていた。
元々、株価については上がりすぎていたという見方も従来からあったので、株式市場と為替市場の動向はある程度予想されていたものではあったのだが、ここに来てサウジアラビアが石油増産を打ち出した。それにより原油先物の価格が下がったことが、株価を押し下げる要因になったとも言われた。
そこで、トランプ大統領は今回の非常事態宣言に合わせて、新型コロナウイルス対策として500億ドル(5兆4,000億円)拠出を表明し、またFRBのニューヨーク連銀が370億ドル(4兆円)の国債買入れを表明した。
加えて、戦略原油備蓄の為大量の原油購入の意向も示した。
それにより、会見終了後NYダウは2,000ドル近く値を戻し、為替市場も円売りが進んで108円台に値を戻した。

https://info.finance.yahoo.co.jp/fx/detail/?code=USDJPY=FX

https://finance.yahoo.co.jp/quote/%5EDJI

特に景気刺激が必要なのは、対中貿易に加え、対EUの要素も多いだろう。
3月11日のトランプ大統領が発表した欧州からの入国を30日間全面禁止の措置を打ち出した。左派メディアは一斉にトランプ政権のアメリカ第一主義は弱腰で近視眼的な愚策だと批判し、欧州からの入国禁止はその最たるものだと評した。

トランプ流が逆効果、「米国第一」な演説で不安と混乱が拡大 http://www.afpbb.com/articles/-/3273216

一方、今後のアメリカ国内の混乱が予想される中で、懸念材料としてロシアのプーチン大統領改憲承認と、新型コロナウイルス終息期に近いChinaが国内経済の立て直しに動くことを考えなければいけない。対中政策で強硬な姿勢を続けてきたアメリカは、ここに来て目に見えないウイルスという攻め手に苦しむことになる。
既に、ウイルス感染が拡大しその対策に十分なデータと手立てを持つ、韓国や日本の手法を取り入れることは容易に想像できるが、アメリカの国内経済の冷え込みは大統領選挙を控えるトランプにとって、アキレス腱となるため、非常事態宣言と共に、大規模な経済政策を打ち出したのは、市場に安心感を与える材料となった。

日本株が週明けにアメリカ株に引っ張られて上昇局面に入るとは考えにくいが、少なくとも円安に動いたことは好材料になりそうだ。

ただアメリカとしてはChinaの覇権拡大に警鐘を鳴らすという従来からの姿勢に変わりはないので、今回、非常事態宣言前に安倍総理と電話会談を行ったことは、今後の対中政策の方向性について協調するためのものだったろう。
今回の新型コロナウイルス問題は、世界中に影響を与えているが、それがChinaが意図したものかどうかはともかく、最初に動き出すのはChinaであることは間違いない。その時、Chinaはどのような手法を駆使するだろうか?
Chinaは国内経済の立て直しには輸出が回復しなければいけない。貿易相手国として最大となるのが日本である。
新型コロナウイルス問題が噴出して以降、日本は対中施策に慎重な姿勢を貫いてきた。既にこの問題は3ヶ月間に渡って世界中に波紋を投げかけているのだが、一方で日本政府の対応は、その後を見越したものと思うのは、穿った見方だろうか。
この点は、新型コロナウイルス後の展望として、再度、愚考を文字にしてみたい。