倉沢良弦『ニュースの裏側』

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習近平国賓来日延期と中韓からの入国制限

官房長官は、本日(3月5日)の記者会見で、正式に習近平主席の国賓来日延期を発表した。両国で発表のタイミングをすり合わせている筈なので、China国内でも正式に発表が行われることだろう。今日現在で新華社が報じた形跡は無いので、China国内でもタイミングを見ているのだろうか。

https://youtu.be/7P4o57GGLEE

また、そのタイミングで政府は韓国全土に渡航自粛及び渡航中止勧告の対象となるレベル2以上の対象地域であると発表した。
また、Chinaに対しては発給済みの渡航ビザを無効とし、実質的な入国拒否の措置を執ることとなり、中韓を経由して来日する者については、2週間の隔離を行うと発表した。

https://www.asahi.com/articles/ASN3577L5N35ULFA031.html

https://www.sankei.com/politics/news/200306/plt2003060002-n1.html

メディアの反応は、Chinaからの来日に制限を加えるべきという論調であったものが、いざ入国拒否の措置を執ると、観光事業や両国間でビジネスを行なっている企業業績に悪影響が出るだろうという、真逆の報道姿勢だ。これは今に始まったことではないが、新型コロナウイルス対策という大事な側面で、風見鶏のような報道姿勢は国民感情に悪影響を与える気がしてならない。

とまれ、ここでは今回の習近平国賓来日延期と中韓からの入国制限について、その背景を邪推してみたい。

12月の段階で、China中央政府武漢肺炎が起きていることを隠蔽しようとしていた。11月の段階で武漢で新型ウイルスにより、肺炎症状を訴える患者が増えていることを警告した眼科医も検挙され(後に釈放)、湖北省武漢市に対して、情報の隠蔽を行ったと見られている。China中央政府は、2月に入り、China全土に新型コロナウイルスが感染拡大したのは、武漢市と湖北省の初動の不備があったとして、600名を超える処分が行われ、湖北省にはChina中央政府から幹部が派遣されることとなった。

https://www.yomiuri.co.jp/world/20200222-OYT1T50260/

https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000176421.html

China国内の混乱はまだまだ続いていて、感染者の増加は横ばいから少しずつ下がってきてはいるが、ウイルスを押さえ込んだとは言えない。それは日本も同じでパンデミックを阻止する努力は続いている。それらの情勢に鑑みて、両国間での判断となった、との官房長官の発表であった。
両国間における貿易額は輸出入総額で30兆円にのぼるが、これは、人件費の差額から見て、金額ベースでは日本よりもChina国内の方が、影響力が大きいと見るべきだ。つまり、習近平氏来日はその背景に両国間の貿易が大きく影響している。日本はChinaにとっても大切なお客さんなので、China中央政府にとって、日本政府が習近平国賓来日を予定変更しないという姿勢を崩さなかったことは、目の上のタンコブだったに違いない。彼らは面子の国であって、超大国の仲間入りしたことで対日本についても譲歩したという弱腰外交の姿勢は見せたくはない。
ところが、新型コロナウイルス問題の終息時期が見えないことで、China中央政府は窮地に追い込まれていった。
今回、日本政府が先に習近平国賓来日の延期を発表したのは、China中央政府に貸しを作って、China中央政府の顔を立てた格好になった。
また、日本政府が行う発表に陰に陽に脊髄反射を行なってきたChina中央政府は、今回、日本が中韓に対して入国制限を行う決定を出したことについて、珍しくダンマリを決め込んでいる。
一方、韓国政府は大邱市をはじめとした新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される地域からの入国制限を発表した途端、韓国政府は政府関係者から日本政府の対応は過激であるとして批判の声が上がっている。これは、Chinaと韓国の両国における対日本の立場の違いを表している。
経済的な交流や人的交流の面で、緊密な関係にあるのが、Chinaであることは論を待たない。竹島問題、レーザー照射問題、反日運動の背景はただ単に対日感情の高まりという側面以上のものではない韓国は、過剰な報道や政府の反応を見ていると、Chinaの後追いのような印象は拭えない。

https://www.sankei.com/life/news/200305/lif2003050075-n1.html

つまり、今回の新型コロナウイルス問題を通じて表面化したのは、日中間にあるのは現実的な経済交流をより重要視している両国政府の思惑であり、日本以上に新型コロナウイルス感染拡大が社会問題化してしまっている韓国が、蚊帳の外に追いやられた印象を受けるのだ。
一方、China中央政府とは違う動きを見せているのが、China海警局で、依然として尖閣諸島への領海侵犯行為が繰り返されている。ここに、習近平体制が一枚岩でないことを物語る、Chinaの脆弱な政治体制を感じる。その意味で、日本政府と協調関係を維持していることを表す今回の習近平国賓来日延期の決定は、China中央政府にとってもありがたい判断だったのではないだろうか。
韓国の文在寅政権は、典型的なリベラル政権なのだが、そこには、現実を度外視した政策に偏ることで国内外に政権批判の輪を拡大させている実態が見え隠れするのだが、文在寅政権が現実路線に舵を切れないなら、ますます窮地に立たされることになるだろう。
それらを比較してみたとき、日中両国政府は現実路線で互いの国益を重視した選択肢を選んでいるとは言えないだろうか。

※追記
China政府外交部高官の習近平国賓来日延期の報道

http://www.xinhuanet.com/english/2020-03/05/c_138847218.htm