倉沢良弦『ニュースの裏側』

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新型コロナウイルスを正しく冷静に恐れる

今回のコラムは、悪戯に新型コロナウイルスの危険性を軽視するものではなく、これまでに分かってきたことと、今後、どのようにこのウイルスの感染者と感染症発症者が推移するのか?を、考察したものだ。
私は感染症の専門家でもなければ、知見があるわけでもないが、私のような素人でも、これまでのデータや資料に基けばある程度の予想が可能だということと、私が常にツイッターで指摘している正しく冷静に恐れるために、何が必要か?を書かせていただいた。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/MN908947
アメリカ国立生物工学情報センター

これが何かご存知だろうか?
これは、今回武漢市から感染が広がった新型コロナウイルスSARSCoV−2)の正体だ。
つまり、それのゲノム解析全文である。既にこのゲノム解析情報は世界中の研究者が共有していて、2003年に流行したSARS重症急性呼吸器症候群)の亜種であることが分かっている。ゲノム解析情報によると70%程度がSARSCoVと酷似しているため、SARSCoV−2と命名された。また、これらのウイルスは、動物由来であることが分かっていて、2003年の時のものとは人→人感染で別の変異が起こったと考えられている。
巷間、まことしやかに言われている人工的なものとの指摘は、まあ茶飲み話のお慰みにはなるが、とてもではないがそのような陰謀論めいたものではない。
つまりこのコロナウイルスは、私たちが気候の変化や、ちょっと体調管理がうまくいかなかった時に引く風邪と、非常に近いものだということが分かる。私たちが風邪を引いた時に悪さをするのが、ヒトコロナウイルスと言われるもので、2種類に分類されている。SARSCoVSARSCoV−2は、それが動物由来のものだということだ。

https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/coronavirus
※ジョンホプキンス大学資料

詳細はこちらをご覧いただくといい。
厚生労働省が発表している内容も、これら研究者の資料に基づいている。また、日本はアメリカのCDC(アメリカ疾病予防管理センター)のようなものは無いが、国立感染症研究所を中心に過去の感染症に基づく膨大なデータを有していて、日本各地の研究所が共有し、今回のような有事の際には、厚労省を中心に初動対応にあたっている。
ただ、これも巷で言われているように、Chinaからの情報の不足や、人的交流に制限を加えるタイミングを逸したために、厚労省の対応が後手に回ったことは否定できない。
一方、日本政府の対応が生温いのではないか?という指摘が多いのも事実ではあるのだが、この新型コロナウイルスのことが分かれば分かるほど、むしろ毎年多くの死亡者を出しているインフルエンザウイルスと、何が違うのだろうか?という疑問が湧いてくる。
また、2003年に流行したSARSは、終息宣言が出されて以降、発生していなかった。今回、その亜種がChina国内で猛威を振るってはいるが、それでも、色々なデータを紐解くと、このウイルスがインフルエンザウイルスのように人類に根付いた存在になるのかは、甚だ疑問だ。

まず、このグラフをご覧いただきたい。


国立感染症研究所

これは、過去10年間のインフルエンザ感染者数の推移で、第1週から第52週までの感染者の増減を表す。定点で採取したデータで、医療機関でインフルエンザと診断された患者数の推移だ。全国的にも概ね同様の発生と感染確認で推移していると考えられている。


厚生労働省

次が、インフルエンザによる死亡者数の推移。これを見れば感染者及び発症者と死亡者の推移が概ね同じ動きを見せていることが分かる。
そして、 東京海上リスクコンサルティング(株) リスクコンサルティング室 危機管理グループ 主任研究員 伊藤 裕美子氏がまとめた、2003年に流行したSARSに関するデータを見れば、SARSの感染者数の推移が、インフルエンザウイルスと酷似していたことが分かっている。

https://www.tokiorisk.co.jp/publication/report/trc-eye/pdf/pdf-trc-eye-040.pdf

加えて、このデータから分かることは、SARSウイルスの時はWHOが世界に向けて警告を発してから収束宣言するまで2ヶ月間だったということだ。ここからも言えるのは、ヒトコロナウイルス、インフルエンザウイルス、SARSCoVといったコロナウイルスは、初期の爆発的な感染拡大を経た後、急速に収束してるという点だ。
勿論、安易にこのデータを新型コロナウイルスに当てはめて、これを軽視するというつもりは毛頭ない。その点は、厚労省が注意喚起しているように、これから1、2週間に感染拡大が抑えられるか否か、にかかっていると思う。言い換えるなら、厚労省が不要不急の外出を避け、外出の際にはマスクを着用し、帰宅後は手洗いの励行をしてほしいというのは、コロナウイルス対策としては実に理に適っている。
次に、新型コロナウイルスの致死率についてだ。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/021100089/
※NATIONAL GEOGRAPHIC

これは、過去の感染症のデータに基づき作成されたもので、今回の新型コロナウイルスは、ビックリするような致死率ではないことが分かる。
繰り返すが、それを以って新型コロナウイルスを軽視して良い、ということではない。
ただ、このような実際上のデータが存在していることも、注視しておく必要があるのだ。
これで見る限り、アメリカCDCはインフルエンザA(H1N1型)の方が、はるかに世界を席巻し、実に2,000万人が罹患し24万人以上が世界中で亡くなっていると計算している。これは累計ではない。1年間の数字なのだ。日本では毎年、数百万人が感染し、3,000人がインフルエンザで亡くなっている。

ここから言えることは、確かに未知のウイルスであり、警戒が必要なのは当然だが、既にどう恐れるか?は、明白だ。
厚労省の対応が甘いと指摘するが、私はそうは思わない。拙コラムでも、また私のツイッターでも繰り返し述べているように、現在の日本政府と厚労省の対応、注意喚起はコロナウイルスに対してのものとしては、非常に理にかなっているし、Chinaをはじめとした各国で差別に通じるような恐れ方は間違っていると指摘しておく。
大山鳴動してネズミ1匹、という事態で終わる可能性が誠に高い。
これはあくまでも私の予想だが、この1、2週間を乗り切れば、収束期は3月中だ。
繰り返すが、この1、2週間が勝負なので、くれぐれも厚労省の注意喚起を守ることが重要だ。