倉沢良弦『ニュースの裏側』

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災害の度に湧いてくる人々

令和6年1月1日、穏やかな元旦になるはずが、能登半島を中心に起きた大地震のニュースが列島を駆け巡った。

【石川能登に津波警報】津波到達予想時刻と満潮時刻(日テレNEWS NNN) - Yahoo!ニュース 気象庁によりますと午後4時10分ごろの地震による観測点ごとの津波到達予想時刻と満潮時刻は次のとおりです。 石川能登には、 news.yahoo.co.jp 

震源地に近い石川県輪島市では建物の倒壊と火災が相次ぎ、また、北陸を中心に広い範囲で津波警報大津波警報が発令され、実際に津波が到達した沿岸地域では津波の被害も報告されているようだ。

能登半島地震 石川・輪島の朝市通りが焼け野原に 1300年の歴史、日本三大朝市の一つ 1日に発生した能登半島地震では、石川県輪島市の「朝市通り」周辺で大規模な火災が発生、多数の建物が焼失した。通りで開催されて www.sankei.com 

また、大規模な火災も発生しており、既に鎮火(2日13時)したとの報道もあるが、以前、燻っているとの報道もある。

【空撮映像】石川 輪島市中心部 大規模火災や倒壊 100棟超延焼 | NHK 【NHK】震度6強の揺れを観測した輪島市の中心部にある河井町で1日午後6時ごろに発生した火災は、14時間以上が経過したいま www3.nhk.or.jp 

このような災害の時、SNSでガセ情報を流す連中がいることが問題になる。

今回の地震でも直後から、被災者を装うアカウントが出現したり、人工地震だと嘘の情報を流すアカウントが出てきたり、震源地周辺の原発が大変な状況にあると嘘の情報を流したりするアカウントが出てくる。

被災者個人が流す情報について、SNSを活用するのは有効だと考えるが、しかし、デマ情報を流す人の神経は、常人には計れない。要するに限界知能の先にある人たちで、SNSサービスの提供企業は、デマ情報だと認識した時点で即刻、凍結にしてほしい。

SNSを活用する人の中には、本当に被災者であった場合もあるので、拡散に協力しようとする人が数多くいる一方で、デマ情報を流す連中はそれら人の優しさを逆手にとって悦に入ってるだけの限界知能だと認識する。

しかし、これら限界知能の連中の中でも、最もタチが悪いのが、この機に原発への反対を訴えかける人たちだろう。

いかにも原発が危機的状況にあるかのように煽り、原発再稼働に反対するような人だ。そう言う人の多くは政治的なイデオロギーで反対を唱えている場合が多く、科学的な見知や専門家として意見具申をしてるケースは本当に稀で、ただ原発に反対するために反対しているだけだ。

そもそも、現時点で被災者の救助や支援が最優先の段階で、原発にしても本当に危険が差し迫っているかどうかは、現場の人間や電力会社、原子力規制委員会の調査の結果で判断すればいいのだが、どうやらそれら限界知能の人たちは、地震津波が即、原発が稼働停止になったり、東日本大震災の再来のように思いたいらしい。

これらポリコレに傾斜したアカウントの意図はどこにあるのか?

そして、反原発を主張するアカウントは、同時に環境問題の深刻さを訴えたりしてる。確かに、環境問題は昭和の時代から日本で問題視されてきたのだが、その割に、反原発を主張する人々は、日本の環境にとって大切な森林を伐採して太陽光発電パネルを敷き詰めることには、反対しないようだ。つまり、話の筋が通ってない。

その矛盾を指摘しても、納得できる答えを持ってる人はあまりいないようだ。

一時期、東日本大震災後、人が入れなくなった地域に太陽光発電パネルを敷き詰めれば、原発をいくつか作る以上の電力が確保できると実しやかに言われ、私も、本当にそうなるなら、日本のパネル製造メーカー、設置工事業者のためにもなるかと考えたが、現実には土地の確保、資金確保の点でまるで話にならず、結局、孫正義氏の絵に描いた餅以上のものではなかったことが分かった。同時に、太陽光発電は最も災害に弱い発電方法であることも露呈し、さらにはメンテナンスや使用済みパネルの廃棄に多額の費用がかかることも分かり、現実的では無いことがはっきりした。

現時点では余震が相次ぐ状況の中、原子力発電所から規模の大きな事故が起きているとの情報は出ていない。にもかかわらず、地震の度に原発があるからだと論点をすり替える論調が目立つ。

志賀原発「安全確保できている」 能登半島地震受け北陸電力が会見:朝日新聞デジタル  北陸電力は2日午前11時過ぎから、臨時の記者会見を開き、前日に発生した地震による志賀原発(石川県)への影響を説明した。  www.asahi.com 

これら反原発を訴えるアカウントは、あたかも日本にある原発が常に危機的状況にあるかのような印象を与えていて、どうしてそうまでして、不安を煽る必要があるのか、私は分からない。仮に、本当に周辺の人々が避難の必要があるような事故が発生したとしたら、政府から発表があるだろうし、被災した現地が大混乱するだろうが、相変わらずそのような様子は見られない。

 

以後、続きはnoteにて → 

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議員逮捕と自民党支持者の教訓

議員逮捕と自民党支持者の教訓

 

柿沢未途議員逮捕の背景

公職選挙法違反容疑で、前自民党衆議院議員柿沢未途議員が逮捕された。

かねてから、逮捕に至るのではないかとの憶測が飛び交っていたが、大方の予測通り、逮捕となった。

詳細はこれから明らかになるだろうが、数回の事情聴取の際、柿沢議員が買収の意思は無かったと主張したことが原因だろう。また、2019年に逮捕された河井克行元法相と河合杏里元参議院議員による地元議員への買収事件が遠因であったこともある。

そして大きくは、現在、自民党内の派閥の中で資金集めの為のパーティー券収入の不記載問題がクローズアップされており、お金と政治にまつわる事件が注目されていることもあり、今回の江東区長選挙における金銭の授受を買収と見て、東京地検は逮捕に踏み切ったのだろう。

柿沢未途衆院議員ら5人逮捕 東京・江東区長選で買収疑い 東京地検特捜部 東京都江東区長選を巡る公職選挙法違反事件で、木村弥生前区長(58)=辞職=の票の取りまとめのために区議らに現金を配るなどし www.sankei.com

今後は、関与した人の違法性の認否に焦点が移ることになる。

大抵は、

「違法性があったとは認識してなかったが、違法行為だったとしたら、反省します」

と言うことで潔く違法性を認めれば、執行猶予付き判決で、議員資格失効となり非選挙権も剥奪されることになるだろう。

国会議員が自らの選挙区において、地方議員や首長の応援を行うのは、自らの選挙に際し、地元議員や首長の支援、また票の取りまとめを期待してのものであり、小選挙区制度を取り入れている日本の選挙制度の場合、地方と都市部の如何に関わらずあり得ることだ。そしてそれは何も与党自民党に限ったことではない。

むしろ、与党だからこそ自民党議員が注目されるし、対抗勢力からの情報提供もあるだろう。

東京地検の面目を保つために、今回は柿沢議員が人身御供に遭ったわけで、では、これからボロボロと同様の事件が表沙汰になるか?と問われれば、そんなことはないだろう。東京地検は、要するにいつでも立件できますよ、と言ってるに過ぎない。

だから国会議員の皆さんは、ヤバいことをやってるなら、直ぐにやめなさいよと言ってるのだ。

特に今回のような事件の場合、お金の授受の双方の考え方の問題であり、「陣中見舞い」と思えば陣中見舞いになり、「票の取りまとめ依頼」と思えば票の取りまとめになる。本来的にはお金を渡す方も受け取る方もなあなあで、お互いに「分かってるよな?」と暗黙の意思疎通を行うものだ。

しかし、時にその関係性が崩れたり、議席が欲しい対抗馬が、情報を得るとそれをリークして表沙汰にすることで事件化そうとする。

東京地検特捜部が動くのは、世間を揺るがすような事件の場合のみであって、相手が小物だったり、マスコミが騒がない相手なら東京地検は本腰を入れない。彼らとて、それほど暇ではない。

繰り返すが、今回、柿沢議員を東京地検特捜部が直接逮捕したのは、現役国会議員だと言うことと、河井克行元法相の逮捕、そして現在の自民党内の各派閥のキックバック問題があるからだと、私は見ている。

自民党議員は、今回のキックバック問題と柿沢未途議員の逮捕を通じて、教訓にしていただきたい。

政治家はお金が無い

つまり、生き馬の眼を抜く政治の世界にあって、絶対的に信頼できる相手は存在しないと言うことだ。確かに法治国家立法府にいる以上、法を犯すことは絶対にダメだが、国会議員だから、地方議員だからといって、誰もが法律に精通しているわけではない。今回のように、長年の習慣めいたものが党内に存在していて、多忙な中で会計責任者や秘書に雑事を任せていれば、本人の予期せぬ事態が起きないとは言えない。

また、地方の支持者や後援会員の中まで身元調査など出来ないから、結局、誰が紛れ込んでるか?など、議員本人が掌握することも出来ない。これは、何も自民党議員や派閥を擁護したいのではない。それが現実なのだ。

今回の件で、政党助成法、政治資金規正法の見直しが行われることになるだろうが、国会議員の多くが指摘してるように、政治家は総じてお金に困っている。お金で悪いことをしないように政党助成法が作られたのだが、政治資金規正法にしても政党助成法にしてもザル法と言えばザル法だ。法律であるにも関わらず、その使途に関して規制が緩やかな背景には、議員活動には多額の費用が必要であることを議員自身が理解しているからだ。

700名以上の国会議員の中には、手弁当で政治活動を行っている議員がほとんどであり、裏金なり支援者のお金をアテにしなければいけない実情の中で、これ以上、政治資金規正法や政党助成法に規制が入ると、お金が無く政治家になることは出来ないと言うことになる。

だからこそ、支援者は然るべく手続きを踏み政治家を支援することが必要であり、仮に自らの仕事に便宜を図る目的で政治家に近づいたり、政治家に影響力を持つことで自らの業界で幅を利かせるとしても、それは実はそれほど大きな働きにはならない。

建設業界、建築業界など特にそうだが、水道組合や電気工事組合に入って当番制の中に組み込まれたり、災害時の復旧工事に従事したとしても、実は青天井でお金を請求できるわけではなく、むしろ限られた人数で工事の請負を行う度に、仕事が詰まってしまい、結果的に他に仕事を振り分けることになる。

要は政治家に近づいて便宜を図ってもらう以前に、まず業界で働いてもらう人を如何に増やすか?が大きな課題だ。これは一例であって、他の業界でも人材不足は深刻な状況に陥っている。

何を言いたいか?と言えば、政治家に便宜を図ってもらうとすれば、各業界における人材確保の為の、規制を如何に緩和するか?如何に各業界の人材育成に行政の協力を得られるか?であって、政治家に近づく業界人も目先のお金目当てでしかなく、そこは政治家ばかりを責められない。

一般のサラリーマンや引退した年齢の人たちは、政治家は庶民の暮らしを良くするために政治家になったと考えている。それは間違ってはいないし、そういう信念を持つ政治家は大勢いる。しかし、一方で、お金目当てやチヤホヤされたいがための目的で政治家になることに固執している者はたくさんいる。

 

以後、

 

・お金と地位に汚い政治「屋」を断ち切るのは有権者

 

続きはnoteにて → 倉沢良弦『ニュースの裏側』

三行半を下された立憲民主党

立憲民主党への政治不審


立憲民主党にとって、少なからず衝撃を与えたのが、先ごろ行われた武蔵野市長選だろう。

武蔵野市長選 松下玲子市長の後継、自公系候補に敗れる「18年間の歩み止めてしまった」:東京新聞 TOKYO Web 松下玲子市長の辞職に伴う東京都武蔵野市長選は24日投開票され、無所属新人で立憲民主、共産、れいわ新選組、社民、武蔵野・生活 www.tokyo-np.co.jp 

長くリベラル政党の牙城とされてきた武蔵野市において、首長が旧民主党系ではなくなることは、今後の国政にも大きな影響を与えることになる。

任期半ばにして市長の職責を投げ出し、菅直人の後継として衆院選を目指した松下玲子は、立憲民主党の思惑としては秋以降の解散総選挙があるとの目算で松下玲子を後継候補に立てた。ところが、岸田総理は臨時国会前の解散を回避し、補正予算の成立を目指したことで、解散総選挙説は大きく後退し、立憲民主党の思惑は外れた。

そして、思惑が外れたどころか、職責を途中で投げ出した愚か者として、立憲民主党と松下玲子の支持率は急降下している。

立憲民主党の支持率が低下したもう一つの要因は、イデオロギー主導で市政を行おうとしている松下玲子への批判が高まったことで、立憲民主党という党そのもののあり方が見つめ直されたことが大きいと考える。つまり、安倍政権以後、旧民主党出身の国会議員が歩んできた実務を無視したポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)体質にnoを突きつけた今回の武蔵野市長選とも言えるだろう。

松下玲子のレガシーは、憲法9条改正反対、性的少数者擁護政策、東京オリンピックパブリックビューイング中止要請、外国人参政権容認、JR吉祥寺駅近くの土地売却疑惑と、8年間の市長在任期間中、見事なまでの意識高い系有権者を満足させたい政策を行ってきた。

自称意識高い系にありがちなのは、このように左派リベラルイデオロギー「だけ」に囚われた結果の政策を進めようとする暴挙だ。

これは静岡県の川勝知事にも同じことが言える。川勝知事の場合も、国策事業であるリニア新幹線に対して、反対の為の反対「だけ」を目的にした為、暴論に次ぐ暴論を屁理屈として、静岡工区の工事を認めようとしていない。ここにも国家事業に右向け右の姿勢をしてはならないという意識高い系リベラルの本性が垣間見える。挙句の果てには開通部分だけ先に営業をすればいいではないか、と言い始めた。そして、JR東日本の社長が会いにくれば、そのように進言するとドヤる始末。

ただの自治体の首長が、日本有数の企業にその経営方針まで進言しようという傲慢さを示していて、それが暴言や傲慢さであることすら理解していない。

リニア新幹線を国家事業として国費で行うことには限界がある。JRは民営化した企業であり、その事業に認可をすることで関係業界への資本移動を支援するのが、国家や自治体の使命であるに関わらず、また、様々な専門家の意見を反映して決まったそのルートに対し、いち自治体の首長が自らの職権を濫用して権力行使を行うなど傲慢極まりない所業であって、その考え方の根底には、反対の為の反対、一度反対を唱えたが最後、引き返せない框(かまち)に囚われているだけのことで、自分が何を言ってるのかさえ、川勝知事は理解してないのではないだろうか?

意識高い系リベラルの多くがそうであるように、国家事業を進めることに良い諾々とする姿勢は良くないと本気で信じているのだ。つまり、マイノリティの意見を聞けと言ってるのである。

この場合のマイノリティとは誰か?

それは、国家事業には従わないという左派リベラルだ。

 

以後、

 

・国民の信頼を失っているのは立憲民主党

 

続きはnoteにて ↓↓↓

 

https://note.com/ryougenkurasawa/n/n7792690ebd65

 

アメリカと中国の綱引き

中東問題

アメリカと中国は中東問題に関わるあり方を互いに模索しているようだ。

ジョージタウン大学のチャールズ・カプチャン(Charles A. Kupchan)教授の論考はシニカルに米中関係をとらえた点で、傾聴に値する。

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2023年12/26・2024年1/2・1/9合併号[2024年の世界を読む]amzn.to
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これは、Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2023年12/26・2024年1/2・1/9合併号[2024年の世界を読む]に掲載された教授の文章から引用された記事だ。

ハマスとイスラエル暴力の悪循環は、米中が協力して中東和平を推進するチャンスも生んでいる<現状から希望を見いだすのは難しいが、ガザと西岸とイスラエルで同時に政権交代が起こり和平実現に意欲的な指導者が誕生する可能 www.newsweekjapan.jp 

今回、Newsweek誌に寄稿した教授の文章に基づき、中東における今後の米中のパワーバランスを考察しながら、中東問題と日本の関係性について、愚考をまとめてみたい。

Council on foreign relation(外交問題評議会)のsenior fellow(主席研究員)であるカプチャン教授は、中東問題の専門家として、アメリカ国内のみならずNATOの戦略決定会議においても影響力のある人物だ。その彼が、Newsweekのような大衆誌に寄稿することは稀なので、この論考は非常に貴重なものと見るべきだ。

カプチャン教授はこの記事の中で、

ガザ地区ハマス支配の終焉
ヨルダン川西岸地区自治政府不支持
イスラエルのネタニヤフ長期政権

の3点を、イスラエル問題の今後の焦点と見ている。

ハマスが行った襲撃事件によって、ガザ地区は焦土と化してしまったが、パレスチナにとってはイスラエルハマスを駆逐してくれるきっかけともなったと考えているだろう。パレスチナ自治政府内部ではハマスのようなテロ組織との関係において、自治のあり方で綱引きをしている状況が続いている。

パレスチナ人は、良くも悪くもイスラエルの間接統治が効いているガザ地区の方が、まだ安定していたと感じているのだ。だから、ハマスのようなテロ組織を支持していない。事実、10月7日以前のガザ地区内の世論調査では7割以上の人々がハマス不支持を表明している。パレスチナ自治政府にとって、ハマスのような組織は鬱陶しくてならない。ハマスの幹部はカタールにいて潤沢な資金力を背景に、自治政府に影響力を行使しようとしているが、一方でヨルダン川西岸地区ガザ地区は貧しさから抜け出すことができないでいる。

とは言え、10月7日以前のガザ地区沿岸部の画像を見れば、どこのリゾート地かと見紛うばかりに、発展しており、ガザ地区の住民は何がしかの職に就いていたりする。つまり、経済的にも安定していたのだ。

どのような形であれ、経済的に安定した社会を経験すると、人はそれを手放そうとは思わないし、その安定を脅かすものを嫌悪する。事実、パレスチナ問題を常に持ち出すことで何がしかの益を得ようとしている現在のパレスチナ暫定自治政府は、実はパレスチナ人から支持されていない。

同様に、長期政権化することで、経済発展の停滞とパレスチナとの緊張関係を維持しようとするネタニヤフ政権も、イスラエル国内出の支持率は低迷したままだ。祖国を大切に思うのは、イスラエル建国以後の国是ともなっているが、同時にパレスチナとの一国二制度の維持の状態を続けていきたいと考えているイスラエル国民は多い。いたずらなパレスチナ側との軋轢を望まないイスラエル国民も多いのだ。

つまり、パレスチナ自治政府側もイスラエル政府側も内政的には不安定さが常についてまわっている。ではそのような状況の中で依然として続いているイスラエル国防軍によるハマス殲滅作戦は、今後どのような方向に向かうのであろうか?

これまでの中東紛争の歴史的経緯を省みても、イスラエル国防軍ハマスが殲滅したと思えるまで、攻撃をやめないだろう。

カプチャン教授が結論つけているように、700万人のイスラエル人と700万人のパレスチナ系アラブ人との争いの中で、「和平」が実現するとすれば、それは数年間位わたる戦闘の結果の戦争疲れ以外には無いかもしれない。そうなると、イスラエルパレスチナ双方の不安定な政権運営がどう影響するであろうか?つまり、戦争疲れはそのまま互いの政権運営への支持に影響が出ると考えられる。

中東問題に割って入ろうとしているのが、イランの支援を受けていると言われるイエメンのフーシ派だ。

イエメン反政府勢力フーシ派”イスラエル向け船舶攻撃続ける” | NHK 【NHK】イエメンの反政府勢力フーシ派の報道官は、NHKの取材に対しアメリカが紅海などでのフーシ派による船舶への攻撃に対応 www3.nhk.or.jp 

アメリカがイスラエルに肩入れすることを批判し、ガザ地区ハマスと連帯するとして、紅海においてイスラエルに向かう船や紅海を航行する民間船籍の船を攻撃しているフーシ派は、元々、イエメンの内戦でイランとサウジアラビアの代理戦争の様相を呈しており、イランが支援するハマスに連帯するのは必然だと言える。フーシ派が気に入らないのは、サウジアラビアとの関係を強めるアメリカが中東問題に関与を深めることにある。中東戦争ユダヤ教イスラム教の代理戦争という名目を保ってはいるが、所詮は中東への影響力を行使したいイランを軸としたレバノン、ヨルダン、シリアの中東強硬派とイスラエルを支援するアメリカとの戦いなのだ。

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これは第四次中東戦争以後、何も変わっていない。だからこそ、ハマスイスラム聖戦はテロ活動をやめない。一つには、それしか手段がないからだとも言える。そこにイエメン内戦でジリ貧状態のフーシ派が関与していると見るのが正解だろう。
フーシ派は、スエズ運河航行の船舶に圧力をかけることで、欧米各国にプレッシャーをかけ、間接的にイスラエルガザ地区ヨルダン川西岸地区に侵攻するイスラエルにプレッシャーをかけようとしている。

民間船舶は経済の大動脈としてのスエズ運河が航行できないとなれば、深刻な世界経済に影響すると言われている。事実、フーシ派が民間船舶への攻撃を行い始めて、スエズ運河航行を諦め、アフリカ大陸を大きく迂回する船舶が増加している。

商船襲撃で紅海通航回避、世界の輸送能力2割減も インフレ再燃恐れ - 日本経済新聞 【ニューヨーク=朝田賢治、吉田圭織】親イラン武装組織フーシによる商船の襲撃が相次ぎ、紅海やスエズ運河の通航を避ける動きが広 www.nikkei.com 

ここまでが現在の中東紛争の大きな流れだ。

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米中の思惑のズレ

では、これに対して、米中はどのような動きを見せるだろう。

アメリカはイスラエル支援を継続し、現在のウクライナ支援からイスラエル支援に軸足を移しつつある。アメリカは自国でのシェールオイル生産が順調なせいもあり、エネルギー問題に積極的に関与しようとはしていない。しかし、アメリカが中東問題を重要視しているのはかつての冷戦時代のソ連との勢力争い以上に、中国の存在を意識しているからだろう。

中国は表向きはウクライナ戦争にしてもイスラエルのテロ殲滅作戦にしても中立的な立場を維持しようとしている。積極的な関与は控えているのだ。

先ごろ行われたプーチン大統領との首脳会談でも、習近平主席は正面からのロシア支援は表明しなかった。

「親愛なる友よ」中国への依存強めるロシア…習近平政権、露との連携利用しつつ深入り避ける構え 【読売新聞】 北京で18日開かれたロシアのプーチン大統領と中国の 習近平 ( シージンピン ) 国家主席との会談では、ウク www.yomiuri.co.jp 

中国は人民解放軍を擁している以上、日本とは外交スタンスが根本的に違う。日本は憲法の縛りを受けており、また先の大戦における枢軸国の立場があるが故に、時代を巻き戻すような外交スタンスは取ることは出来ない。中国の場合、専制主義国家であり、かつ自称連合国側にいる国家として、国連の常任理事国の立場がある以上、アメリカ同様、国連加盟国の戦争状態には相応の責任を求められる。

つまり、国家間の紛争に対して、人民解放軍を送り出す責任があるのだ。それが常任理事国の責任であり、だからこそ、拒否権という強力な権力を行使することができる。中国の現在の目的は、日本との領土、領海問題、台湾問題、インド国境問題、チベットウイグル地域の統治問題を抱えていながら、表面的にはそれらの問題に対処していることになっている。実際は、何もしていない。

何もする必要がない。外務省や中国共産党のスポークスマンに、口先外交をやっていれば良い。中国の周辺国は、人民解放軍の本当の実力に懐疑的で、有事の際に人民解放軍が実力行使をしたことが無いため、その戦力を過剰評価している点がある。加えて中国が保有している核兵器についても、実際に核弾頭を積んだICBMを撃つ可能性や、戦略核の使用は無いまでも戦術核使用に中国が踏み切るかどうかについても、疑問を呈する専門家は多い。実験を繰り返したり実際に核弾頭を搭載可能なミサイルの開発を進めているとしても、過去の冷戦時代同様、本当に撃つことについて、中国共産党は及び腰ではないか?と言う見方だ。

アメリカは逆に、先の大戦以後、朝鮮戦争、中東問題、ベトナム内戦、レバノン、ドミニカ、グレナダパナマ湾岸戦争ソマリアボスニア・ヘルツェゴビナリビアアフガニスタンに関わり実戦を積み上げてきた。

中国共産党はもとよりアメリカとことを構える気持ちは全く無い。アメリカと今以上に緊張関係を高めても、中国が不利になることを知っているからだ。それは、軍事的なプレゼンスの違いによる。アメリカは過去を踏襲し、いざとなればガザ地区への攻撃も辞さないだろう。現在、紅海で民間船舶を攻撃しているイエメンのフーシ派に対しても、いざとなれば徹底的な攻撃を仕掛けるに違いない。恐らくはイエメン国内のフーシ派の拠点は衛星とスパイを通じて掌握しているだろうから、いざとなれば直接爆撃も行う可能性が高い。

では、アメリカの行動に対してイランはイスラム革命防衛隊を使ってアメリカに対し反撃を行うだろうか?

その可能性は低い。当たり前のように判で押したようなアメリカ批判は行うだろうし、小規模のやり合いはあるかもしれないが、サウジアラビアを越えてまで、アメリカ軍に関わろうとはしないだろう。最終的にはことの発端であるハマスを批判することになる。カタールレバノンにいるハマスの幹部批判も行うかもしれない。イランはどうせならハマスの幹部がために溜め込んだ私有財産を狙う可能性が高い。繰り返すが、中東のイスラム教国は、全然、一枚岩などではない。

そして、アメリカが中国に注文をつけるとすれば、軍事的なプレゼンスに加われと言うメッセージではなく、余計なことをするなと言うメッセージではないだろうか?

ウクライナとロシアの紛争において、中国は中立的な立場で最終的には両国の仲介役を買って出ることで国際社会の立ち位置を高めたいと考えている習近平は、プーチンに対して、エネルギーを買ってやるし、北朝鮮から弾薬を仕入れる仲介はするが、間違っても戦術核を使うようなバカな真似はするなと説得するだろう。

ロシアが戦術核を使用してしまうと、中国が恭しく仲介役に乗り出すシナリオが崩れてしまう。そうなれば、中国が最も狙っているウクライナ復興に向けての中国介入のシナリオが崩れてしまう。

だからこそ、現在の中東問題に対しては、アメリカから、中国人民解放軍の派遣は容認するとしても、他の欧米各国と歩調を合わせろとは言わないだろう。

元々、地政学的に見て中国は中東問題には関心が無かった。そして、口出しできるだけの政治力を持ち合わせていない。その役割を果たせる国があるとすれば、どちらにも片寄せしない日本くらいしかない。

もし中国がイスラエル批判に終始し、パレスチナを擁護すると言うことは、すなわちイランを擁護することになるとアメリカは考えているだろうから、そうなれば今よりも一層、過酷な国際社会の経済制裁に発展する可能性がある。

以前から、幾度も触れてきたように、中国の国内経済は不動産市場が総崩れになることによって、国内消費はデフレに向かいつつある。これまで中国経済を支えてきたのは、国内の製造業と先進国への輸出だったのだが、そもそも、輸出で儲けるお金を国内で還流させて国内消費に振り向けることで、経済発展をしてきた、その基盤が根底から崩れようとしている。仮に金融機関の救済に中国共産党が乗り出すとすれば、すべての不動産市場の企業を国有化するか、大量の人民元を供給して不良債権の処理に向かうしかない。それはつまり、日本の失われた30年と同じ道を辿る。

経済規模が大きいのと、共産党一党独裁主義は、むしろ強権を発動して不動産市場の混乱を抑え込むかもしれないが、それはつまり、国内のインフラ整備や製造業支援を過度に遅らせることになる。

果たして、一度でも経済的な豊かさを経験した中国国民がそれを容認するだろうか?

岸田総理の狙いとは?

裏金作りの真相とは?

自民党の各派閥内で裏金作りをやってきたのではないか?との疑惑が世間を賑わせている。

立憲民主党枝野幸男元代表は、予算委員会の質疑の中で、パーティー券のキックバックは自分たち野党もやっているし、行為自体は違法ではないが、収支報告書への不記載は問題だ、と指摘した。

これは枝野氏の言う通りで、パーティー券の売買も、収益のキックバック政治団体が受け取ることも違法性は全くない。今回問題視されているのは、そのキックバック分を収支報告書に記載せず、裏金にしていたのではないか?との疑惑だ。

当たり前だが、慣例として行われてきたことを、政治家本人が知る由もなく、また収支報告書に不記載であってもそれが慣例化されていて、問題視されると認識していなかったことは、よくある話であって、過去5年間に遡り修正申告すれば、何ら問題はない。


率直に言って、今のマスコミと野党議員とその支持者の騒ぎ方には、違和感しかない。

国会議員の多くがキックバックを受けているのが現実で、そうやって政治活動費を賄っている。国会議員の歳費が高すぎると批判する人もいるが、日本で政治活動をするためには見えない出費は欠かせない。事実、歳費だけでは政治活動を十分に行えないからこそ、キックバックのようなものが慣例として残っているのだ。

つまり、キックバックを批判するのは、国会議員が自らの首を絞めているのと同じことなのだ。だから、野党議員も、尤もらしいことを質疑で言いながらも、実は心の中はヒヤヒヤしている。

また、国会での質疑の様子を見て、いつか見た風景だと感じたのは私だけではないだろう。

モリカケの時も、執拗に安倍政権を追及していたが、あの時話題になったように、追及される側に事実を証明しろと無理難題を押し付けていた野党勢が、今度は自分たちの首が絞まるような追求などする筈がない。

今回の騒動は、何人かの議員が役職を解かれる可能性はあるが、来年の通常国会政治資金規正法の一部改正が出され、野党も渋々応じる形で幕引きをするのではないか?私は、そう予想している。野党議員にしても、自分たちが万が一政権を握った時、その法的制約を受けるのは自分たちであり、国会議員が自分たちに都合が悪くなる法律改正などするわけない。本当に政治資金規正法が問題なら、旧民主党時代に改正されていなければおかしい。そうしなかったのは、結局、野党議員であっても脛に傷を持っているからだ。

むしろ、私は別の問題があると考えている。

野党とマスコミ

今回のキックバック疑惑に関して、あたかも野党議員が清廉潔白であるかのように、政治と金の問題を追及しているから野党議員は信用できると言ってる支持者の方が、問題が多い。

今の野党議員の多くは、自民党のリベラルな議員よりも左に偏っている。

自分たちでも、自分たちが言ってることが正しいなどとは信じていないのだが、自民党を保守と言ってしまった以上、自分たちの存在意義はその真逆の立ち位置にいるしかない。これが今の野党を野党たらしめているところだ。

以前、拙稿でも触れたが、これから日本に必要なのは、右でも左でもない中道をゆく政党だ。時に右に寄り、時に左に寄り、応変自在に立ち回れば良いのである。むしろその中身、つまり政策が重要であり、今の立憲民主党日本共産党のように国民の目線を無視して、イデオロギーで政策を立てるような政党は、百害あって一利なしなのだ。

ただ、自分の生活環境が改善しないことを政府の責任にしたい人たちや、人権や反戦反核、差別といったイデオロギーを掲げることが政治の役割であると勘違いしている人たちが、それらのアイコンとしての政治家を求めているだけで、国会や街頭演説で人権だの差別だの反核だの反戦だのと叫ぶ政治家こそが、政治家だと思い込んでいるだけだ。

はっきり言って、反核反戦など考えている政治家はほとんどいない。

本当に反核反戦を訴えるなら、どうして核保有国を批判しないのか?

環境問題もそうで、日本で再生可能エネルギーを普及させろと叫ぶ人ほど、現代文明の恩恵を無視して、荒唐無稽な夢物語に現を抜かしている。日本のような先進国で再生可能エネルギーだけで電気を賄うことは不可能だと知っているのに、ファッションとして環境問題を訴えている。つまり、環境問題に取り組んでいる自分をかっこいいと思っているのだ。

昭和30年代以後、日本は経済の高度成長と引き換えに、環境破壊を繰り返してきた。その反省の下、法律が整備され、今の時代、廃液を垂れ流したり産業廃棄物をその辺に捨てたりなどすると、厳しい方の裁きを受けることになる。つまり、日本は世界でも稀な、経済成長と環境保全を両立させてきた稀有な国なのだが、その事実を無視して、あたかも日本が環境破壊の最前線にいるかのような暴論を吐く。

本当に地球環境が大切だと言うなら、環境対策を無視して工業廃水を垂れ流す中国のような国を批判すればいいと思うのだが、何故か、それはやらない。

例えば、東シナ海南シナ海で深刻な海洋プラスチックゴミを調べると、そのほとんどが中国のゴミであると分かっているのに、何故か批判しない。CO2排出量も中国が世界一の排出量なのに、何故か中国を批判しない。

環境問題や人権問題を言う人々に、常について回るのが、このような中国批判をしない姿勢だ。これは不思議でしようがない。人権問題で言うなら、中国ほど近隣諸国も含め人権弾圧している国もない。チベットウイグルもモンゴルもネパールも本当は中国ではないのに、執拗にこれらの国に対して脅しをかけ漢民族を移住させチャイナタウンを作り中国への同化政策を進めようとしている。

ウイグル人女性は世界でも屈指の美人なのだが、漢民族と同化してしまったら、美しいウイグル人はいなくなってしまうだろう。

話を元に戻せば、日本国内で人権問題や差別や反戦反核を訴える人に共通しているのが、イデオロギー化した理想主義だ。ゴールを先に決めて、そこに向かうのである。つまり共産主義と同じだ。共産主義の本質は、すべての財産を国有化することにある。すべての財産とは、個人の内面も含まれている。それらを国家が統制することで平等な社会、労働者が幸福を享受できるというまやかしだが、その考え方と日本国内で理想主義を掲げる人々は、その道程において共通している。

理想を追い求めるから、なんだか自分は良いことを掲げ、良いことに向かっていると勘違いしてしまう。そして、良いことに向かっているのだから、少々のことには目をつぶれと考えているのだ。

そして、共産主義と共通しているのがまさにこの一点で、良いことをしていると言う勘違いが正義感を生み、その歪んだ正義感が、他者への批判となっている。

しかもその間違った正義感に立脚し、自分たちは功利主義だと勘違いしてるから、余計にややこしい。良かれと思ってやってるから始末に負えないのだ。そして、両論で物事を見ようとしない。偏っている。

こういう人に限って、災害の時に動物を助ける動画を見て涙したり、ユニセフの災害地や戦地の募金を行ったりしている。つまり、人間的に悪い人ではない。

では、どうして思考が偏るのだろう?

一つは正義感。一つは誤った知識。一つは学校教育。一つはマスコミの偏向報道

そして、こういう人に限って、政権は悪だと考えている。権力の座にいる人間が、真っ当で金に綺麗な筈がないと信じ込んでいる。日本の議会制民主主義において、特権階級など存在しないのだが、あたかも日本の政権与党の政治家はこの日本を牛耳り、甘い汁を啜っていると考えるようだ。

それなら、貧困ビジネスをやっている山本太郎の方が、よほど悪人だと思うし、民主主義というものが存在しない日本共産党や参政党のような政党の方が遥かに悪だと思うが、政権批判をしたい人は、そういうところは見えていないようだ。

この間違ったものの見方が、時の政権が行うことを是々非々で見ることが出来ない政治家や有権者やマスコミを作り出す。日本では個人の権利が重視され思想信条と言論の自由が存在する。だから、余計にエコーチェンバー現象が起きて、宗教の原理主義のような状態になるのだ。

前回の拙稿で触れたように、これは何も野党に限ったことではない。政権与党は、上手くいって当たり前で、安倍政権のように強固な支持基盤を持ちえた政権の方が珍しい。そこには安倍晋三という稀代の政治家の資質もあったろうが、やはり時代背景や、諸外国の動きが影響してしまう。

その意味で、岸田政権は数多くのことに結果を出してはいるが、岸田総理の人となりと広報が下手な為に、政権の取り組みや狙いが上手く有権者に伝わっていない。これは菅政権も同様だ。そして自民党内ではこの上手くいかない所を逆手にとる党内政局の側面がある。

以後、

 

内閣改造解散総選挙

 

続きはnoteにて → 倉沢良弦『ニュースの裏側』

自民党支持者こそ、意識転換が必要だ

デフレ脱却は2013年から始まっている

 

30年間、日本はデフレ社会だった。

それに慣れっこになったが故に、今のコストプッシュインフレへのアレルギーがある。それはまごうかたなき事実だ。

マスコミも識者もSNS界隈もそうだ。だから、所得が低い人に対して手厚い保護を与えよと大合唱が始まる。それはある種、私もそう思うところがある。

岸田政権は、所得税非課税世帯を中心に、前回の給付金に加え、追加で7万円の給付を行い、来年6月を目処に一人当たり4万円の所得税と住民税の減税を行うと打ち出した。

これに対し、今国会で年内の措置に踏み切るべきだとか、国民民主党の玉木代表が打ち出したトリガー条項発動の凍結解除を年内に行い、年末調整や確定申告に間に合うようにすべきだとの意見もある。

いずれにせよ、一昨年、昨年の税収増分を国民に還元すると言う意味では、非常に有効な政策だと感じる。

ただ、この政策に対する有権者の反応、取り分け自民党支持者の反応は鈍い。それが、政権の支持率に現れている。

 

テレビ朝日「内閣支持率」

 

臨時国会で決定した補正予算についても、内閣の支持率を見る限り、国民の支持は得られていないと言うのが実情のようだ。

これには様々な要因があるとは思うが、前述のインフレアレルギーがあるように思えてならない。日本人は、30年間のデフレ社会に慣れっこになってしまって、インフレ悪魂論が我々の意識に底流にあると思えてならないのだ。

それが、過剰な反応に現れている。

一方、日本経済全体で見れば、GDP(名目)は着実な伸びを見せている。世界と比較したドルベースで見れば、伸び率に落ち込みがあるじゃないか、と言う意見もあるが、自国通過建で見れば、実はドイツと日本はほぼ同程度の伸びを見せている。

 

日本のGDP(日本円)

 

現在GDP世界3位の日本であるが、間も無くドイツに抜かれるだろうと言うけれど、それは為替による影響によりドル建てで見た場合の問題だ。輸入に経済の大多数を依存しているとか、人口が少なく外的要因に左右される経済の国ならともかく、日本のような国の場合、ドルベースのGDPが少々上がろうが下がろうが、あまり影響はない。

むしろ、国民の意識の根底にあるデフレマインドの方が問題で、このデフレマインドを転換できないまま30年間を過ごしてきたことを自覚した方がいいのだろう。

デフレマインドが厄介なのは、消費者だけでなく、企業もそうであり、本来、国民生活を上向かせなければいけない政治家もデフレマインドが染み付いてしまっていることだ。また、それら政治家を批判する立場のマスコミも、同じくデフレマインドが当たり前になっている。

だから、今回のような外的要因のインフレ局面に右往左往し、最終的には政治にその責任を求める。そして、有権者も同じで増税の気配を感じ取ると、一斉に増税反対の論調になる。

実際に、岸田政権が政権発足以後、増税したことはなく、ガゾリン価格の抑制、困窮世帯への給付、製造業の国内インフラ整備に対する補助金を出すなど、積極的な財政出動は行なってきた。もちろん、金額の問題はあるにせよ、岸田政権が発足して以後、増税は行われていない。

 

岸田政権の政策は「デフレからの脱却」の一点突破

 

財政出動の政策面で、デフレにどう対処するか?が前提となった政策、予算、補正予算の枠組みになっていることにも注目が必要だ。というのも、税収が上昇するという経験自体を政府も財務省の役人も国会議員も忘れている。政策は常に税収が上向かない前提での政策立案になってきた。また、円高が定石だった為、為替による影響のインフレが怖くて仕方がない。だから、変に日銀介入などの意見が飛び交う。

問題はGDPデフレーターの数字であって、4〜6月期の伸び率は、直近の資源価格の高騰と為替の影響を受けているだけであって、この急激な伸びを危険視する必要は無い。

直近のGDPデフレーターに関しての分析は、第一生命経済研究所のエグゼクティブエコノミスト、新家義貴氏の論考を参照して欲しい。

 

加速するGDPデフレーター

 

名目GDPの伸び率はそのまま、税収増に繋がる。

この動きはコロナ禍から脱しつつあった2021年頃から見え始めており、コロナ禍を乗り切り通常の社会生活が戻った2022年から一気に上昇に転じている。どうして2021年からGDPデフレーターの伸びが見られたかと言うと、実はGDPが上昇すれば税収増が起きることと不可分だからだ。世界経済を牽引してきた中国経済が後退局面に入ったとは言え、やはり円安基調による輸出の伸びは大きく影響を与えていて、同時に中国を中心にしてきたサプライチェーンの再構築が進む中、製造業の国内回帰が進みつつあり設備投資が増加しつつあることも影響があるだろう。

 

設備投資、最高31兆円 今年度16.9%増

税収増の面でも、国会の予算委員会では、今般の補正予算の枠組みの議論の中で、鈴木財務大臣が22年度の税収の上振れ分は、国債の償還等に使い、財源は無いなどと国民を馬鹿にするような答弁を行い、物議を醸した。

と言うのも、23年度の税収は22年度を更に上回るとの見方が大半を占める。

 

昨年度税収、71兆円超え=3年連続で過去最高―法人、消費、所得税が軒並み増

 

これは時事通信が伝えた2022年度分の税収の伸びを報じた記事だが、2023年度は更に3〜5兆円の上積みがあるのでは、と予想されている。

世界経済がコロナ禍から抜け出したと言う問題もあるだろうし、為替差益が飛躍的に伸びたと言う側面もあるだろう。

ただ、経済政策の最も重要な点は、賃金と求人倍率の推移だ。

 

完全失業率、有効求人倍率

 

コロナ禍の影響で有効求人倍率は一時的に落ち込みを見せているが、これはサービス業全般が求人を抑えたことによる影響だ。ところが、完全失業率はほぼ影響が出ていない。一般的なマクロ経済学の指標から言えば、完全失業率3.0%以下は完全雇用状態であり、簡単に言うと病気等により働ける状態に無い人、自らの意思で働くことを拒否している人を除く、すべての人がなんらかの仕事に就いていることになる。

その上、有効求人倍率が1.6倍程度あると言うことは、日本は今、労働力が決定的に不足している状態なのだ。

別言すれば、要するに経済は回っているのである。

では、問題は賃金だと言う人もいるだろう。

実は、今年度、大企業の89%、中小企業の84%が賃上げを行っている。

 

2023年度の「賃上げ」実施、過去最大の84.8% 「賃上げ率」5%超、中小企業が37.0%で大企業を上回る

 

確かに賃金の伸びがインフレに追いついてないと言う指摘もあるだろう。

実質賃金は上がってないじゃないか、と言う指摘だ。

2023年度のインフレ率は為替の影響を受けていると言うのが、正直なところで、2021年から数字的には円安基調とインフレ率の上昇は相関している。

インフレ率が急激に伸びる一方で、2021年から中小を含むほぼ85%程度の企業は2.5%程度の賃上げに踏み切っている。インフレの上振れ分がごく僅かに追いついてないと言うのが実情だ。

今般、岸田政権が補正予算所得税と住民税分、一人当たり4万円の減税に踏み切った。加えて、所得税と住民税の非課税世帯に対して7万円の追加給付を決めた数字の根拠は、インフレに追いついていない実質賃金の不足分を補う目的がある。

課税世帯については、世帯の人数にもよるが、平均年収の5.0%程度が減税される計算だ。

 

以後、

 

・今は時代の転換点

 

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何故、中東紛争が第三次世界大戦のきっかけになるのか?

イスラエルの事情、ガザ地区の事情

 

テロ組織ハマスが、ガザ地区イスラエル人入植地で開催された音楽祭を襲撃し、多数を殺害した上、数多くのイスラエル人を拉致、拘束する事件が起きてから、はや2ヶ月が経とうとしている。

加えて、国境線を越えてイスラエル側に侵入し、多数のイスラエル人を無差別に襲撃し、ここでも犠牲者が出た。

これに対しイスラエルは、ハマスと同じくガザ地区内で活動するテロ組織イスラム聖戦の軍事拠点への爆撃を開始し、その攻撃は苛烈を極めた。世界に発信された動画などにより、いかにもイスラエル軍が市街地を無差別に爆撃しているように見えるが、実はイスラエル側はテロ組織の軍事拠点がどこにあるのか、ほぼ掌握しており、また衛星等によって、イスラエル側にロケット弾を撃ち込んだ拠点も把握していて、そこをピンポイントで攻撃しているだけだ。つまり、テロ組織は衛星等からの探索を防止するためと市街地に拠点を設けることで、民衆を「人間の盾」として利用することで、イスラエル軍が無差別爆撃を行なっているかのような印象操作を行なっている。

シリア北部地域で行われた無差別爆撃は、絨毯爆撃や化学兵器を使った本当の無差別攻撃だったが、これがシリア政府やロシア軍を非難するきっかけとなった。ガザ地区テロリストはこれを逆手に取り、イスラエル軍は非道な攻撃をしているとの印象を世界に植え付けるきっかけとなった。

それに対し、イスラエル軍は実際の爆撃動画と攻撃対象がテロ集団の拠点であることを淡々と報じている。イスラエル軍は、例え世界がイスラエルを批判しても、ガザ地区への攻撃を止めはしない。

その理由について、先日公開されたテレ東ビズの豊島晋作氏の動画が歴史的な背景、イスラエル人の心境、イスラエル国民の世論を詳細に説明している。

 

イスラエルの論理」を徹底解説~たとえ世界を敵に回しても戦う理由とは?【豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス】(20231130日)

https://youtu.be/OiwPMb4908o?feature=shared

 

この動画の中身を鵜呑みにしてイスラエル側に正当性を持たせることは危険なことではあるし、イスラエル側とパレスチナ側の双方に互いの正義が存在していることは間違いないので、冷静な目でイスラエル側の主張を聞いた方がいい。

だがしかし、少なくとも現在まで、パレスチナ側の主張が世界中のイスラム教徒に影響を与えているのは間違いがなく、欧米諸国のイスラム教系移民の多くがパレスチナへの同情、同調する主張を行なっている。

私は以前の拙稿でも触れたが、互いに正義が存在するとしても、国際ルールが厳然として存在する以上、不意打ちをくらわせ無差別殺傷を行ったテロ組織を正当化する理由は微塵も無いと考えている。

またテレ東ビズの動画の中でも触れているように、イスラエルは建国以来、戦争が繰り返されてきた中東の火薬庫であったが、それはイスラエル建国以前からの歴史も含めてその意味を紐解く必要がある。

古くはオスマン帝国まで遡る歴史の中、第一次世界大戦第二次世界大戦を通じてナチスから弾圧されたユダヤ人は、結局は小さくとも国家を建設しなければユダヤ民族全体の拠り所は無いとして、建国を目指した経緯がある。

客観的に見れば、中東の統治を放り出し三枚舌外交を行ったイギリスこそが批判されるべきものだが、イスラエルはむしろそれを好機として建国に突き進んだ。

建国直後から現在に至るまで4度の中東戦争を行い、エジプト、シリア、パレスチナ、イラン、レバノンベイルートを敵に回したイスラエルは、ことごとくそれらを排撃してきた。イスラエル国防軍を強くさせていったのは当然としても、むしろ問題なのは、中東紛争を通じてより過激になった、アラブ諸国のテロリストの勃興だとも言える。

イスラム教のシーア派スンニ派の間の長年の争いとオスマン帝国崩壊以後、新たなに引かれた国境線の問題、そして更に中央アジア各国の国家間の紛争も複雑に絡み、極東アジアの日本には理解が及ばない点が多い。

 

欧米各国の狙い

 

理解が及ばないという点では欧米各国も同様で、中東の産油国との関わりと中東問題が複雑に絡む中、外交政策を進めてきた。

アメリカが本格的に中東問題に関わるようになった背景には、イギリスが投げ出した中東問題へのプレゼンスを確保し、産油国に影響を及ぼしたい狙いがあった。巷間、言われているアメリカにはユダヤ系移民が多いというのは表面的な理由であり、世界のエネルギー資源をドル決済で行い覇権を握ろうとしたアメリカの狙いが透けて見える。

アメリカは産油国から産出される原油の国際市場取引において米ドル決済を行わせることで、米ドルが世界の基軸通貨になることを狙い、それを達成したのだが、実は、米ドルが基軸通貨を目指した背景には原油の消費量がアメリカが極端に多いという事情があった。言い換えれば、アメリカは国益を最優先した結果なのだ。

また、第一次世界大戦以後、国際社会で発言力を増したアメリカは、連合国を組織し当時台頭してきた枢軸国連合のドイツ、イタリア、日本と第二次世界大戦を行い、勝利することで連合国のリーダーとして国際社会をリードする立場に押し上げられた。

先の大戦については諸説あるのだが、歴史の事実として国連が組織され、枢軸国が敵国として記述されたことが全てと言っていい。

話を元に戻すと、前述のテレ東ビズの動画は、現在、世界を揺るがしている第五次中東戦争の本質をイスラエル側から説明した動画として秀逸なもので、歴史的経緯も含め、中東問題の一つの核心をとらえた解説だと思う。

極東の日本から見た中東情勢は、産油国のパワーバランスばかりに目が向いてしまいがちだが、実は、日本にとっては非常に大きな意味を持っている。単純に産油国原油価格の抑え込みを行うばかりではなく、背景には日本人では及びもつかない宗教戦争の側面が大きいのだ。

 

現代の宗教戦争

 

現在、世界中で猛威を奮っているムスリムは、今回のイスラエルによるガザ地区侵攻が、可哀想なパレスチナ人を抑圧する西洋社会と密接な関係性を持つイスラエルの非道であるかのように振る舞っているが、問題の本質は本当にそこにあるのだろうか?という問いを、門外漢の日本人は決して忘れてはいけないし、地上波の報道だけに頼った情報収集では偏向したものの見方になりがちだ。

以前の拙稿でも触れたが、私はイスラエルを擁護するつもりも、イスラエルに対して片寄せするつもりも無い。ただ歴史認識と現実に起きていることを具にとらえた時、日本人が警戒すべき点が多いにあると言いたいのだ。

そして、世界の状況から見て、日本政府の対応の如何は、実は我々の実生活にも大きな影響があると考えている。

私が最も懸念するのは、原油価格の上下動でもなければ、アメリカの二方面外交の行方でもない。国際世論がイスラム教に向けられる、その中身を最も危惧している。

今回のイスラエルによるガザ地区攻撃をきっかけに、世界中に散っているムスリムが相次いで声を上げ、パレスチナ人はイスラエルから迫害されているというイメージを世界に刷り込んできた。今、世界の世論は二分されている。①イスラエルの歴史を知り、今回のテロ組織による虐殺事件を以てテロ組織ハマスイスラム聖戦を攻撃するのはイスラエルの自衛措置であるという意見と、②イスラエルが市街地に無差別攻撃を仕掛け、多くの子どもと女性を含むパレスチナ人が犠牲になっているのだから、イスラエル戦争犯罪を行なっているという主張だ。

繰り返すが、イスラエルは衛星とスパイを駆使し、ガザ地区内のテロ組織の拠点のほとんどは掌握しており、あくまでもテロ組織の攻撃拠点を叩いているだけなのだが、自分たちを擁護する世論形成を狙ったテロ組織は動画を次々に公開し、プロパガンダを行なっている。

それらテロ組織の宣伝を利用しているのが、世界中にいるムスリムだ。

貧しい中東や北アフリカにいても生活が上向かない為、欧米社会の移民政策をアテにしてものすごい数のムスリムが欧米社会で自分たちのコロニーを形成している。

 

EUの移民政策

木戸裕(国立国会図書館

 

国立国会図書館の木戸裕氏の『EUの移民政策』を読めば、1960年代に始まるヨーロッパの移民政策の推移の詳細が分かる。

本論を読めば、現在のようなヨーロッパの移民に対する政策の骨格ができたのが、アムステル条約後に纏められた「タンペレアジェンダ」にその内容が確認できる。

タンペレアジェンダ」において、EUの参加国は、移民の権利について細かな申し合わせを行なっている。

そしてこの「タンペレアジェンダ」が基礎となり後のハーグ計画に引き継がれ、EU域内の移民に関わる各国の取り決めが明らかとなった。

その中身の詳細は是非、木戸氏の文章に触れていただきたいのだが、要は、「タンペレアジェンダ」とハーグ計画は、合法、不法を問わず移民の権利保護を強力に行うことの必要性を記載している。この点が、現在に至る欧州の移民政策へと繋がっているのだ。

元々、欧州には数多くのムスリムが移民として住している。

1960年以後、欧州各国には、実に1,870万人の移民がいると言われている。欧州は労働力不足を理由に中東や北アフリカからの移民を積極的に受け入れてきたが、その中には合法、違法の両方がおり、それら移民を祖国に送り返すことも出来ず、結果、「タンペレアジェンダ」とその後のハーグ計画で欧州にいる移民に対しての基本的な考え方と扱い方が申し合わされたのだ。

欧州における移民に対する差別と偏見が広がる中、EU議会は、長年の議論の末に2007年、「人種、宗教、肌の色、血統、国籍、民族等を理由とする差別の禁止」が採択された。

これが、現在、欧州各国で暴れ回る移民に対して強権を発動して取り締まれない理由だ。仮に暴れ回るムスリムを批判したり、不法に取り押さえたりすると、この取り決めに抵触するから、警察も簡単に手出しは出来ない。警察が明確な取り締まりを行えないことを知っている移民は、それ故、日本人から見たらおよそ想像できないような暴れ方をするのだ。

特にイギリス、フランス、ドイツ、スペイン、イタリアでこれら移民が暴れ回る事例が相次いでいるが、この原因は元を正せばEUの政策によるところが大きい。

これはアメリカも同じだ。

 

以後、

 

・悪名高きProposition47とは?

・「戦争反対」が戦争を引き起こす

 

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このまま解散総選挙に突入したら、立憲民主党は惨敗すると思える理由

立憲民主党の苛立ち

衆議院予算委員会では、国会中継のおり、立憲民主党の堤かなめ議員の質問の最中に立憲民主党の逢坂議員が怒号を張り上げたりして、中継を見ていた国民は、
「このオッサン、何を大声張り上げとんねん?」
と言う感想以上の感想は持たなかっただろう。

【国会ライブ中継】参議院・予算委員会―― 政治ニュースライブ[2023年11月27日午後](日テレNEWS LIVE) 国会の模様をライブ配信します。◇日本テレビ報道局のSNSX https://twitter.com/news24ntvTi www.youtube.com 

国会中の野党質問に内閣の誰が返答するか?は、法律の範囲において所管の大臣が答弁すればいいと思うし、そもそも、その大臣の発言も含め内閣を総理する大臣である岸田首相が全責任を負うことになるだろうと考えるので、最終的に岸田総理に責任追及すれば良い。逢坂議員は、いくら自分が気に入らない答弁者だとしても、怒号を張り上げてやってる「フリ」をすることに、いい加減、国民は飽き飽きしていると言う国民感情が分からないのだろうか?
また、27日の参議院予算委員会では、辻元清美議員が執拗に憲法改正問題を追求するなど、立憲民主党としての方向性が定まっていないことを感じる。加えて、同じく立憲民主党の石橋通弘議員は、先ごろ報道された自民党各派閥のパーティー券を詰め寄っていたが、そもそも法的に問題が無いことを執拗に聞いてる点など、有権者側に立てばどうにも合点がいかない。と言うのも、政治資金問題を追求し始めたら、立憲民主党議員とてその批判を免れることは出来ないからだ。
辻元議員について言うなら、関西万博問題とライドシェア問題では岸田総理には厳しい口調で詰め寄るのに、所管の斉藤国交相には猫撫で声を出す。これは、大阪維新に対抗するために、公明党の支持が欲しいからではないかと推察する。現在、自公連立そのものが崩れる厳しい状況にあることは誰の目にも明らかで、維新が台頭し、さらに今回の補正予算に賛成した国民民主党が政権与党に接近したとなれば、連立を組む公明党の存在意義そのものが問われることになるからだ。
ましてや、文科省主導で過去に例の無い厳しい対応をされた統一教会問題の真っ只中にいるのが創価学会であり、創価学会は教祖の池田大作氏が逝去したことで、創価学会そのものの求心力が急速に弱まる可能性が非常に高い。弱体化が始まっている支援母体の創価学会が、選挙において集票力の基盤になり得ないとなれば、自民党は平気で公明党を切るだろう。
そもそも公明党の存在は、自民党にとっては目の上のたんこぶだからだ。
大阪府内をはじめ、関西圏で着実に支持基盤を拡大している維新の会は、いずれは東京を中心とした関東圏に進出してくるのは目に見えており、また、国政においても議席を伸ばす可能性があり、そうなると、立憲民主党社民党は、ますます大阪の支持基盤を失うだろう。そうなると議席に執着する辻元清美議員のようなギリギリの当落ラインすれすれにいる者にとっては、今から支持基盤を強固にしておく必要がある。元来、大阪に強い筈の創価学会も段々と維新に押される状況の中、協力関係を結ぶ議員を探しているだろうから、そこに乗っかろうと辻元清美は考えているのではないか?と、私は邪推する。
自民党としては、衆議院で可決された補正予算参議院でも穏当な状況で可決することを狙っているが、立憲民主党は、予算成立後にあると言われている解散総選挙も睨みながらの国会論戦ということで、例えば逢坂議員のように来る衆院選に備えて存在感を残そうとする議員が増えてくるだろう。ただ、雑駁な状況判断だけ見ても、衆院選後、立憲民主党代表選に逢坂議員が立候補したとしても、そもそも代表職を担える器ではないし、他に立憲民主党を代表するような議員がいるようにも見られない。
また、参議院を見ても、辻元議員や(謝)蓮舫議員のように、ご本人たちがどれほど目立ちたいと思っても、以前のようにマスコミも注目しなくなったし、立憲民主党の代表職を担えるような議員の存在も無い。だから、岡田幹事長のような古株がおよそ野党の幹部とは思えない発言をしてしまう。

【衆院予算委】総理の「減税」は物価を上回る賃上げに「白旗」を上げている 岡田幹事長  衆院予算委員会で「令和5年度一般会計補正予算」の基本的質疑が11月22日に行われ、立憲民主党の岡田克也幹事長が質疑に立ち cdp-japan.jp 

つまり、今の立憲民主党は一枚岩とは言えない。
今回の臨時国会においても、攻め手を欠いてるという印象しかない。
安倍政権の時のように、良くも悪くも政権不信を掲げて国会において政権を追求できたのは、安倍政権自体が盤石だったからだ。ちょっとやそっとでは政権は倒れないと分かっていたから、むしろ、国会で目立つことを許されていたと言える。
ところが表面上でも安倍政権打倒を掲げて国会運営を邪魔しまくった結果が、何度かの国政選挙を経ての今の支持率であり、菅政権、岸田政権ともに安倍政権の考え方を追随しつつも独自色を織り交ぜている為、むしろ弱体化した立憲民主党は攻め手を欠いている。

安倍政権に踊らされた立憲民主党

以前も書かせていただいたが、安倍政権は野党議員に騒ぐだけ騒がせながら、外交力を発揮して関係国との連携を強めつつ、国内政治の何がキモになるかを熟知した政権運営を行ってきた。つまり、その老獪な自民党政治に絡め取られていいようにされていたのが立憲民主党だった。この点を総括しない限り、立憲民主党政権政党として力を付けることは出来ない。
また、立憲民主党の熱烈な支持者は、安倍政権を追求していた頃の覇気を感じないと嘆くが、実はそうではなく、自民党によって時間をかけて弱体化させられたことを分かっていない。ここが日本の与党と野党の違いなのだ。そして、こういう手練手管を分かって知略を働かせなければ日本の議会制民主主義の基盤の拡充など、夢のまた夢だ。
自民党のパーティー券の件についても、今ひとつ追求の矛先が鈍っている原因はそこにある。確かに立憲民主党議員の中にも、叩けば埃が出る議員がいるからというのもあるが、つまり、安倍晋三という政治家から何も勉強してないのだ。泉代表も育ちが良さそうな言葉で岸田総理を追求しているが、やはり弱い。おぼっちゃまのような泉代表では、いかな岸田総理相手とは言えど、泉代表とは経験が違いすぎる。岸田総理は、安倍晋三の元で閣僚を長年経験してきた。派閥の長として党内政局の経験も豊富だ。大変申し訳ないが、泉代表では岸田総理には敵わない。
その意味で、日本の国政の機微を理解している国民民主党の玉木代表は、政治家としては泉代表の一枚も二枚も上手だ。つまり、彼と国民民主党が思い描く政策実現の最短距離は与党連立だと知っているのだ。だから、今回の補正予算の時にも、自分たちを弱小政党だと卑下しながら、野党が与党に協力することの意味を分かって、補正予算に賛成したのだ。
岸田総理が政治家として老獪なのは、落選した議員とはいえ、国民民主党矢田稚子氏を総理補佐官に起用した点だ。これは玉木代表も驚いたに違いない。確かに矢田氏は優秀な人材だが、そこには、来る補正予算を睨んでのこともあったろうし、またその先には玉木代表を閣内に取り込む狙いもあっただろう。
その点を立憲民主党日本共産党の共闘と比較すればよく分かる。両党の支持層から見て、本来「水と油」であるはずの立憲民主党日本共産党が一時的にでも野党共闘を模索した背景は、つまり、互いの支持層を使った議席のバーターだ。つまり自公連立のようなものを作り出したかったのだ。立憲民主党は連合の支持を貰ってる筈なのだが、こちらも安倍政権の時代から切り崩しに遭ってきた。連合としても、賃金が上昇するとなれば法案を成立させる力の無い野党の立憲民主党にくっついている必要はない。
2021年に行われた衆院選での野党共闘は、5野党間での協議が必須条件だった。実際には実現はしなかったものの、考え方の違う野党が互いに協力して議席をバーターしあうなら、まだ可能性はゼロではなかった。ただ、ここでも野党間で議席の奪い合いが起こり、それらを取りまとめられるだけのリーダーが不在だったため、3割の勝率に止まった。
今回、立憲民主党は支持層の弱い部分を補完しようと日本共産党との共闘を考えたのだが、そもそも支持母体の連合は日本共産党とは仲が悪い。連合にしてみれば、用無しのような扱いをされたと考えれば、ますます、立憲民主党と距離を置くようになるだろう。
そして、ここが立憲民主党の判断ミスだったのだが、アテにしていた肝心の日本共産党の支持基盤は弱体化の一途なのだ。高齢化も進み、若年層は共産主義など全く関心が無い。この読み間違えが立憲民主党の今を象徴していると言っていいだろう。
立憲民主党の歴史を旧民主党まで遡れば、強固な自民党政権を打ち倒すため、バラバラだった野党がまとまって出来上がった経緯がある。当時、一向に上向かない経済に対して、打つ手なしだった自民党政権に対して、有権者はデフレ不況から立ち直れない日本経済にカンフル剤を期待して誕生したのが旧民主党だったが、東日本大震災もあり、また結局は烏合の衆でしかないことが露呈しただけだった。下手に大きくなってしまった立憲民主党は、中途半端に支持者を増やしてしまったため、支持者もどこに向かって良いか分からない状況に置かれているのが現状だ。唯一、左派リベラルな有権者が気を吐いたのは安倍政権当時だけだった。
森友学園問題、加計学園問題に端を発し、新聞や雑誌記事をネタにしたスキャンダル追求が主たる業務になってしまった旧民主党勢力は、政策を度外視して他に手段が無いという現実を直視させられながら、結局は国会の貴重な議論の時間を浪費するしかなかった。
旧民主党支持者、立憲民主党支持者は、この点の総括は終わっているのだろうか?
長きにわたる安倍政権時代、旧民主党勢力が真綿で首を絞められるように、力を失って行ったその現実と、本質について、本人たち自身が一番理解してないからこその現在であるという認識はあるのだろうか?
その総括が足りないが故に、繰り返すが現在の立憲民主党旧民主党からの脱却に時間がかかってる。時間がかかっているから、逢坂のような議員がいなくならないのだ。
立憲民主党はリベラルな政党らしいが、リベラルとは「革新的な」と言う意味はない。革新的な政党なら、とっくに自分たち自身が革新的な改革を行い、時と共に変遷していなければならない。そうなっていないところが、立憲民主党日本共産党と同じく保守政党だと言われる所以だ。変わることが怖いから、変えられない。むしろ変わってはいけないという強迫観念が支配している。自分たちで自分たちを強迫しているから、代表選をやっても旧民主党「的」な候補者しか出てこないのだ。
辻元清美のように、衆院選を見据えて公明党にすり寄るような態度を見せたり、泉代表のように、党内での意見集約が出来なかったり、逢坂のように政権追求の意味を理解せず安倍政権当時の姿勢のまま、中身も曖昧な問題点に執着したりと、党内がバラバラの印象だ。今回の衆議院予算委員会での逢坂議員に象徴されるように、古い議員体質が目立つ議員が騒ぐのも、立憲民主党自身が革新的な政党としての態度が無いからだ。
自分が実現したい公約に真摯に向き合うことは大事だ。逢坂で言えば教育問題だ。しかし、今の議院内閣制の中で党派の力は誠に意味が大きく、だからこそ民主主義の根幹と言われるのだから、逢坂のように自己都合で国会での間違った政権与党への追及のあり方こそが主権者を置き去りにするものだ。
主権者の中にも政府や与党に対して疑問を呈する者がいるのだから、国会での追求は当然だ、と言う意見もあるだろうが、国会では記者会見を開け、ぐらいは言ってもいいと思うが、それ以上は国民の時間である国会運営の妨害でしかない。
繰り返すが安倍政権以後、そのような国会を空転させる態度が支持率を落とし、数多くの議員を落選させた最も大きな要因だと言い切って良い。
立憲民主党議員は決まり文句のように、
「国民の貴重な税金を無駄使いするな」
というが、一番無駄使いをしているのは、国会論戦を停滞させている立憲民主党自身だ。

 

以後、

 

弱体化した立憲民主党と来る衆院選

 

続きはnoteにて → 倉沢良弦『ニュースの裏側』

検察庁法改正に騒ぐ、無関係な人々

https://www.sankei.com/politics/news/200516/plt2005160007-n1.html

先日(15日)、内閣委員会の最中、窓外から今回の検察庁法改正に反対する人々のシュプレヒコールが聞こえ続けていた。
内閣委員会のタイミングに合わせてやってるわけで、まるでここで声を上げれば、国会中継で音声が入るよと知っていたかのような出来事だった。
ゲスの勘ぐりを加えれば、ちゃんと情報を事前に漏らして、誠に政治的な動きになっている。それはまるで、特定秘密保護法集団的自衛権行使容認に反対して活動していたSEALDsの姿と重なる。
あの頃、学生たちをスケープゴートに、野党議員が煽動したのは周知の事実であって、政治行動であるから問題はないとしても、いかにも多数の国民が声を上げているかのように必死に印象操作を行った。そのSEALDsも消滅し、活動を引き継いだ『未来のための公共』も消滅した。当時、若者が立ち上がったことに感銘した多数の高齢者、学生運動華やかなりし頃の夢を持つ人々が、数多くデモに参加し、国会前に集結した。
私はSEALDsが頑張っていた頃から、彼らにとっての悲劇は、アイコンになる人物が現れなかったことだと指摘してきた。また、SEALDsをはじめとしたそれら学生活動の多くは、キリスト教左派系の人々であったことから、本来的に革命思想で動く共産主義者とは、考え方に相反するものがある。
いずれも反政権で一致していたに過ぎない。つまり主義主張が左派であってもバラバラなのだ。そこにチェ・ゲバラは存在していなかった。
今の国会前で騒ぐ人たちも、同様に反権力としての連帯を模索したが故の様を見せている。反権力闘争が必要か否かは置いておいて、一つのうねりを起こすパワーはそこにはない。イデオロギーや政治思想や政治体制の成熟した日本において、新しいものは生まれにくい。
大統領制を敷くアメリカは、いともたやすく前政権の法案を亡きものに出来る。自由と平等の相克があるが故に、アメリカ国民は共和党民主党の主義主張、政策で自国の今を決定つける。しかし、アメリカが何故、共産主義を違法に位置付けているか?は、もはや終わった考え方だからだ。
また、強力な指揮権を有する大統領は、必要に応じて、大統領令を発布し、様々な有事に対応する。

今回の新型コロナショックで比較すれば、日本に比べて、国民への支援の決定が早いとことについて、政府批判が起きた。
ようは、早くしないとコロナ以外の死者が発生する可能性があるからだ。
しかし、蓋を開けてみれば、対GDPで見る限り先進国中最も手厚く国民に経済対策を講じていることが分かる。
一次補正を含めると、既に117兆円(対GDP比20%程度)の予算が決定しており、また二次補正も組むと言われている。
国民一人当たり10万円給付は既に始まり、企業支援もかなり手厚く行われる。
これら政府の動きに呼応して、市中の銀行も積極的な融資枠の拡大や融資条件の緩和に乗り出している。

1月下旬、旧民主党時代から法務省において検討されてきた検察庁法改正は、日本におけるコロナショックが出始めた1月下旬より、中身の検討が始まり、今国会中の決定を目指しはじめた。
野党はこの変更を、政権の……

https://www.asahi.com/articles/ASN5J6716N5JUTFK00C.html

……続きは、コチラ

https://note.com/notes/ryougenkurasawa

西村経産相と国民との約束

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-05-13/QA53ETT0G1KX01

ブルームバーグにおける西村経産相のインタビューで、日銀と政府が連携して企業の資金繰り支援に乗り出すとのことだが、問題は財務省が考える増税路線との擦り合わせが出来ているのか?という疑問が拭えていないという点だろう。
個人の給付に関しては、方向性も定まり、支給が開始された。個人消費という点で見れば、これまで幾度も触れてきたように、生活の支援という目的がある以上、この給付は消費に回る。小売業者の多くが、この個人への給付金頼みになっている筈で、政府の思惑の一端はここにあることは再三触れてきた。
中小零細への支援策も固まり、残りの個人事業主への新たな支援策、またアルバイトで学費、生活費を賄っていた学生への支援策も盛り込まれた第二次補正の骨格も固まってきた。
今般の西村大臣のインタビューでは、日銀と政府がタッグを組んでいくという点に、最初に触れた財務省の動きがきになるところだ。
多くのリフレ派の学者や評論家が懸念を表明しているのは、基本的対処方針等諮問委員会の、経済面での対応を審議するメンバーについてだ。
大竹文雄大阪大大学院教授(行動経済学)、井深陽子慶応大教授(医療経済学)、小林慶一東京財団政策研究所研究主幹(マクロ経済学)、竹森俊平慶応大教授(国際経済学)のいずれも増税路線、緊縮財政論者ではないのか、という懸念だ。東日本大震災後、復興増税やむなしという論調を作り上げ、結果的に経済再生がなされないままに、10年が経過した。財務省増税路線の裏付けには、GDPの伸び率、有効求人倍率、失業率に基づく、好調な景気判断があると言われている。二度の見送りとなった消費増税を推進したのも財務省財政均衡派の強力な後押しがあったと言われている。

庶民感情からしても、この重大なコロナショックの経済対策に対し増税路線に動くというのは、何とも理解に苦しむところであって、グローバルな視点で見れば、世界のサプライチェーンの復旧には最低でも年内一杯、更に新たなサプライチェーンの構築も考慮すれば、3年程度影響が長引くとの指摘もある。
途上国における経済損失も含めると、累積で850兆円もの損失が見込まれると、IMFWTOが指摘している。しかも、それは最小でだ。
日本のGDPの落ち込みは、10%を超えるかもしれない。
一次補正も含めた経済対策は100兆円規模になったが、二次補正、三次補正でどこまで真水を供給できるかによって、文字通り日本の経済再生の道筋が見えてくる。
そのいみで、私が以前から指摘している、コロナショックは経済ショックなのだから、バブル崩壊から、ずっと続いてきたデフレからの脱却に向かうカンフル剤としての役割を担う、今回の財政出動に対し、弱腰でいてはならない。

市場で経済活動を行う我々も、その辺りの注視をしておく必要がある。
西村経産相は大きな任を負っているが、それは同時に国民からの期待でもある

コロナショックの前と後で変わるもの

世界に大混乱を引き起こしたウイルスは、私たちに何をもたらしたのだろうか? 
コロナショックの前と後で、私たちの生活習慣や考え方の何が変わったのだろうか?

現在、国会では検察庁法改正に多くの議論が沸き起こっているが、政局を意識する特定の野党は、安倍政権がコロナショックを利用して、強行採決を行う恐れあがるとして、予算委員会等で盛んにそこを追求してますが、本来的な国民に対する支援策、企業に対する支援策についての議論が進んでいない印象を受けます。
特に11日の立憲民主党福山哲郎議員による質疑を聞いて、気分を害した人も多いでしょう。
専門家会議の尾身先生に対する不遜な態度は、多くの研究者や感染症の専門家の尊厳を傷つけるものでした。ご本人もぶら下がり会見等で、釈明するような言い方をしているが、ツイッターでは福山氏を批判するハッシュタグがたち、既に30万を超えるツイートになっている。

https://www.j-cast.com/2020/05/12385828.html?p=all

確かに、今回尾身副座長は参考人として政府側の立場で国会に出席してはいるのだが、尾身氏の功績は、WHOに事務局長に推挙されるほどのもので、日本の感染症専門家の中でも、その実績と知見においてずば抜けている。国会議員たる福山氏は選挙において国民から選ばれた立場の人間であって、彼に投票した人々の代弁者であろう。代議士ではない参議院だったとしてもだ。

現在のコロナショックは、医療関係者のみならず、自粛要請に従っている全ての人々に苦難の道を強いている。最も大きな影響を受けていると思われるのが、サービス業、飲食業を中心とした中小零細だが、一方で小売業にも影響が出始めている。店舗数を減らしたり、事業規模の縮小に乗り出す企業が増え始めた。経産省は事業規模に合わせた緊急の資金供給に乗り出しているが、返済の目処が立たない企業は、当座のつなぎ融資に活路を見出したとしても、その先が見えていない。その意味で、サービス業、飲食業は新たな事業形態に移行する段階だろう。
ウーバーイーツのようなBtoCモデルが活況を呈しているが、自粛ムードの中での一時的な需要だとしても、今後のサービス産業の方向性を示していることは間違いない。機を見るに敏でかつ資金力のある企業は、即時、転換を図れるが、そうではない個人経営の小商いの場合、先行きの不安は拭えない。政府の多厚い支援と言っても、それには限界がある。
れいわ新選組山本太郎氏は、追加で100兆円規模の財政出動をあと2回は行うべきだと主張するが、問題はその中身であって、冗舌な割に荒唐無稽な財政支出論は、お粗末と言わざるを得ない。彼を毒しているMMT理論は、一歩間違えれば暴走しかねない危うさを含んでいる。

また、テレビでは盛んにタレントがリモート出演する番組を流している。
コレも、いわゆる一般企業で進めている方向に追随した形だ。テレビコンテンツは行き詰まりを見せていて、それに比してタレントの数が多すぎるので、この機に転職を迫られるタレントも多く出てくるだろう。裾野が大きければ山は高くなるのだが、それには市場が無ければならない。テレビは双方向ではないので、垂れ流すコンテンツが次々と出てこない限り、市場は縮小する。情報の受けてであるオーディエンスが飽きてしまったら、市場は縮小し、産業としては衰退する。
特にテレビ産業の場合、下支えしているのが視聴者が興味を示す番組作りという制作側の才能や登場するタレントのキャラクター性や才能であり、企業はそれに金を出す。YouTubeのような媒体が幅を効かせてくると、オーディエンスは地上波に拘る理由が無くなる。これまでアマチュアが支えてきたYouTubeニコニコ動画のようなコンテンツビジネスにプロの番組制作者やタレントが参入してきたら、市場は飽和しなくてもコンテンツはプロの映像制作へと移行していくだろう。実際にその傾向は現れてきている。そうなると、現在の地上波のように、規制が強く、同じような番組制作に帰結してしまう。
今回の自粛ムードは、そういった面も露わにしてしまった。映像コンテンツビジネスも、大きな転換点を迎えているのだ。

産業や経済は人が動くことによって成り立っている。
コロナショックによって衰退する産業、勃興する産業が見えてきたが、GDP規模で見た場合、やはりマイナス成長であることは事実なので、この自粛要請が解除されない限り、人々の生活にいつまでも不安が付き纏う。
最初に触れた福山哲郎議員の国会での在り方は、彼自身の資質の問題ではあるし、実際に彼の発言や態度には不遜な面がある。ただそうとばかりも言えないと感じたのも事実だ。彼の姿はそのまま国民の苛立ちの代弁でもある。その視点を抜きに問題視するのは、本質を見えなくさせてしまう。
東日本大震災は、人間の力では抗えないものだったが、今回のコロナショックは、多分に人災に近い。情報統制したChinaが、ということではなく、このウイルスの正体が分からないままに、各国の取り組みにバラツキがあったことだ。WHOの指導力が発揮されなかった点も大いに指摘されるべきだが、研究機関の充実している先進国ですら、その対応に大きな温度差があった。
幸にして日本は死者数が極端に低く抑えられている。BCG仮説を主張する論者もいるが、やはり日本の場合は国民全体に広く深く公衆衛生観念が根付いていることが、一番大きいと考える。

また、大きくはテレワークを行うことで、オフィスにいたのとはまた違う労働環境があると気づかされた人も多いはずだ。
印鑑問題だってそうだ。日本の伝統的な印鑑文化は、不必要に会社に出勤しなければいけないという煩わしさがあったが、それらの伝統習慣を変えていくきっかけにもなった。ギスギスした人間環境に惑わされることなく、好きな音楽をかけ、自分の仕事に集中して、作業効率は上がったという声も聞く。

新型コロナウイルス禍は、季節性インフルエンザの流行を抑えることに役立ったこともデータによって明らかだ。

終息したと言えない状況下、しかもこれから経済を立て直さなければいけない状況下の今でさえ、実は自分の周囲を見渡すだけでも、意外な変化に気づくかもしれない。
私は、コロナショック後、日本人がそれ以前と全く同じには戻らないように思う。
その戻れない部分が、新しい価値や新しい産業を生み出す原動力になる。
恐らく、一歩先を見据えている人は、もう動き出しているんじゃないだろうか?

今回のコロナショックは、多くの人の人生を変えてしまった。
元に戻る必要は、いささかもない。
前に向かえばいいのだと思う。

私がイメージするツイデモ参加者の日常

#コロナショック は経済ショックだと再々、言ってきた。

SARSCoV−2による感染症 #COVID−19 は、季節性インフルエンザより高い致死率、感染力は季節性インフルエンザよりも劣る、ということも分かってきた。

遺伝子変異が著しく、その意味では、少々ややこしいウイルスであることも分かっているし、基礎疾患患者や呼吸器疾患、循環器系疾患を持っている人には感染自体が命取りになることも分かっている。日本では死亡者の多くは高齢者に偏っているが、中には若い世代の死者も、もちろんいる。海外では乳幼児の死亡も確認されている。

一方、これまでに様々な疾患で使用されてきた薬品で、目覚ましい効果を示すものが発見されたり、ワクチンの開発がかつてないほどのペースで進んでいる。

これらが順調に進めば、私たち人類は #SARSCoV−2 と共存していく道が見えてくるだろう。

人類がこのウイルスの抗体を獲得できれば、さほど恐れることはなくなる。それはもう間近だ。

 

前回の拙コラムで取り上げた、Twitter上で大騒ぎになっている #検察庁法改正案に抗議します は、多くの人が参加し、芸能人が拡散し、リベラル論壇が追従している。元々、自民党以外の政党支持者の多くは、リベラル志向が強く、差別、格差といった言葉に過剰に反応する人が多い。それはTwitterアカウントの語る日常を少し調べれば分かることだ。

彼らは #LGBT であったり、#非正規雇用 であったりする場合もある。

今回の検事長の定年延長問題と、検察庁の定年延長を同一視することは、今回の議論のテーマを見えにくくしてしまっている。

 

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/seido/dai5/5siryou2.pdf

検察庁法(現行)

https://www.nippon.com/ja/news/yjj2020022200142/

改正案のポイント

 

今回の改正案について、公務員法規定に則り、検察官の定年延長を行うということで、それ自体が問題視されることでもなく、旧民主党時代から法務省内において検討されてきたことであって、今回、ツイデモで取り上げられている点は別の視点だ。

現在の安倍政権に近いとされる、黒川検事長の半年間の定年延長と、今回の検察庁法の改正のタイミングが重なり、しかも現在のコロナショックの真っ只中のことで、要はどさくさに紛れて政府が強行に法改正するのは、司法に対しての政府の介入ではないのか?という論調であり、その論陣を武器に、今回のツイデモ参加者は張り切って拡散をしているわけだ。

 

今回のツイデモの論調が、実際の改正法案の中身とは全く相入れないものであって、この二つを同列で論じるのは、安倍政権が自分たちよりの検察庁を作ろうとしている権力の濫用ではないのか?という誤解と言わざるを得ない。

今回の検察庁法改正案について、施行は2年以上先になる為、くだんの黒川氏は既に検察庁にはいないだろう。

いなくなる人と、その人に直接関係ない法律改正に関して一緒くたに、安倍政権の横暴だとか、独裁だとかの印象操作は、どうにも理解が出来ないし、その辺りを本来、新聞や地上波は正しい情報を発信すべきだ。ところが、メディアはツイデモで何百万回ツイートされたという話題性だけだ。もちろん、それを報じるだけでもいいのだが、その報じ方に、軌道修正とか正しい情報発信という意図が感じられない。

いかにも、騒いでいる人の背中を押している論調が続く。

 

では今回、左派リベラル政党とその支持者が何を問題にしているのか?と言われても、実はそれがよくわからない。Twitterのトレンド上位に今回のハッシュタグを置いておくという目的以上に、またいかにも安倍政権が何か悪いことをやっているかのような印象操作をする目的以上のものを感じられないのだ。

もちろん、匿名アカウントで行われていることに、具体的なデータを絞り込むことは難しいが、彼らの多くが賃金を含めた雇用を問題にしたり、差別や格差を問題にするということは、少なからずそこに問題意識を持っているということであって、これらのSNS上の人の意識については既に多くの研究データが公開されている。

特にTwitterのように文字数が少なく、リアクションを取りやすいSNSほど、その傾向が高い。

SNSで積極的に情報発信したり、リツイートを繰り返す人の多くは、あまり他人に関心がないことも分かっている。つまり、自分にしか関心がない、自分に関係することだから問題視するのだ。

そこから類推すると、今回のツイデモを積極的に行っている人ほど、コロナショックの中でドサクサに紛れて法案を通そうとする政権の横暴だ、という解釈だ。それはけしからん。煎じ詰めれば私が楽な生活してないのに、どさくさ紛れに何やってんだ!という論調に聞こえるのだ。

 

今回の方改正案についても、従来の検察庁法にしても、ちょっとややこしい法律上の表現方法さえクリアすれば、誰でも理解できる文章で書かれている。

今回、特に芸能人と呼ばれる人の多くが、安易にツイデモでハッシュタグを拡散しているが、その発言の要旨を見ると、どう考えても関連法に何が書かれているか知らないで発言しているとしか思えない。

フォロワー数が多い人ほど影響力が大きいので、特に有名人はよく理解した上での情報拡散が重要だ。

また、自分がフォローしているタレントが拡散しているからという短絡的な判断は、判断材料とは言えない。

ただ煽動に乗っているだけで、しかも数字だけを見てトレンドだー!と騒いでいる。

それはとても危険なことだ。

ツイデモで盛り上がる皆さんへ

#検察庁法改正に抗議します、のハッシュタグTwitterのトレンド上位にランクインし、朝日新聞をはじめとしたメディアが取り上げる事態になった。一時、ハッシュタグを付けたツイートが200万を超えたことで、今回のツイデモに一定程度の効果があったと見る人がある一方、一つのアカウントが100回以上ツイートしているものも見られた為、Twitterジャパンがスパムと判断し、トレンドから外す事態にもなっている。

Twitter上では、それら特定のアカウントによる複数投稿の事例を紹介したりしているが、この動きに芸能人も便乗して、余計にお祭り騒ぎになってしまったようだ。

宮本亜門氏は、昼間のワイドショーに出演したおり、芸能文化に関わる人々への支援策が弱いことを嘆き、それも現在自粛状態にある芸能人が、今回のハッシュタグ祭りに参加した大きな要因だと思う。

日頃から政治的な発言が目立つタレントが、真っ先にこのハッシュタグ祭りに参加し、最もらしく今回の検察庁法改正の問題点を指摘したつもりになっている。また、メディアが今回の法改正と、黒川検事長の定年延長を重ね合わせて報じるという印象操作を繰り返す為、そのにわか知識で発言するタレントが、余計に問題を肥大化させている。

確かに、日頃から日本の若者に人気のあるタレントが、政治的な発言をすることは、好ましいものではないという風潮はあった。私はそれには反対で、情報というものは万人に公平に平等に与えられているものであり、その情報に基づいて政治的発言をすることは、有権者の一人として、国民全員に権利がある。

ただ、今回のハッシュタグ祭りに参加している多くのタレントは、正しい情報に基づいて発言しているのだろうか?

また、芸術文化に携わる人の多くは、政治的な主張に囚われることなく、むしろ体制を積極的に批判するべき立場にあるという意見もある。演芸の世界では体制を面白おかしく滑稽に演じて見せることで、庶民に笑いを通じて権力者批判を行うということもあるだろう。それを否定するものではないし、むしろそれが文化の発展に寄与するなら、大いにやればいい。

ただ、それをオーディエンスの立場で見聞きする我々は、タレントの発言の要旨を理解し、正しい分析をする必要がある。

情報とは大抵、一方的に発信されるものだ。それは短文でわかりやすいセンテンスに満ちていて、色々な批判を短い言葉に含意する。それは笑いであったり、歌だったり、演劇だったりするだろう。しかし、その批判自体が正しい知識に基づいているのか?の判断は、我々側に責任がある。

言い換えるなら、視覚聴覚に訴える主張に対して、我々自身が判断できる力を持っていなければ、今回のツイデモのような、深い意味のないお祭り騒ぎでしかなくなる。

ほんの少し注意して、情報を見つけ、冷静に判断すれば、今回の騒動の多くはトレンドに振り回されているだけのことだということが分かる。

何百万人ものフォロワーを抱えるタレントの発言は、そのフォロワーの何%かに影響を与えるのは事実だ。

そんなことは、日本に限らず多くの国で起きている。しかも、それは自分の掌大の世界で起きていることで、誰もがほんの少し指を動かせば出来てしまう日常の些細な出来事でしかない。そこに深い考察も思慮も存在しない。

だからこそ、危ういのだ。

 

今回のハッシュタグ祭りについて、多くは間違った情報に基づいているし、大いに政治的力が働いている。

情報を発信する側と受けての双方に問題があるし、それを表象させた現象であって、それには大きな危険性を孕んでいることを知るべきだ。

コロナショック後の日本

私は、本業で上場企業から町の工場まで、幅広いクライアントを抱えている。
自粛要請が拡大し、都道府県が物流を除き、事実上のロックダウンに置かれている中、痺れを切らしたクライアントの多くが、経済が再開した時のため、今から資材調達その他に動き始めている。
私の仕事柄、サービス、飲食といった業種には縁がないのだが、それでも、企業が活動再開するとは、人が動くということなので、それにつれてサービス業が動き出し、店舗改装、店舗内部の再整備に動き出している企業が増えてきた。
もちろんその一点だけを取り上げて何かを言うつもりは無いが、痺れを切らしているという表現は、まさに人々の心の中を、そのまま表している言葉だと思う。
一次補正で現金だけで約16兆円規模の対策が打たれ、徐々に現金が国民に行き渡り始めた。次に問題になるのは、二次補正、三次補正に関して、具体的にどれほどの規模の現金が、追加で市中にバラまかれるか?だ。
以前から、拙コラムで繰り返し指摘したように、古くはバブル崩壊まで遡り、アジア通貨危機リーマンショックで国家破綻を叫ぶデフレ容認論者、日本破綻論者の期待も虚しく、日本経済はそれでも堅調に成長を続けている。
非常に象徴的なのは、低迷する日本経済に対し、多くの国民がデフレ脱却を期待していたにもかかわらず、第一次安倍、福田、麻生、鳩山、菅、野田、第二次安倍の各政権のうち、デフレ脱却に本気で動いたのが、第二次安倍政権のみだということだ。
日本の財務官僚には、アレルギーのようにインフレを嫌う傾向があり、また財政健全化を進めなければならないという、ある種の呪縛がある。
そこには、企業の収益確保と同じ、税金をいっぱい集めたやつが偉い、という呪縛でもあるだろう。
財務官僚は、あの手この手で新たな税金を打ち出し、少しでも多く税金を集めようとする。翻って経済学者の多くが、特にリフレ派の多くが、経済のパイが大きくなれば、税収は増加すると繰り返し言っているにもかかわらず、財務官僚の頭は固いままだ。
私はTwitterをよく利用するが、一部の政治家は、いまだに財政健全化を言う。
日本人一人当たり、800万円の借金がある、という財務省官僚の呪いだ。

今回のコロナショックのような有事の際、経済活動が再開するまでの間、ほぼ際限なくお金を出し続ける必要があるだろう。
そのような形で、経済活動が再開するまでの期間、人々は国家と共に生きて行かなければならない。では、経済活動が再開した場合、人々の目線はどちらに向くだろうか?
リチャード・ボールドウィンは、そのコラム『COVIDー19と通商政策pt.7』の中で、

“多くの(医療)製品は、複数の国境を跨いだサプライチェーンを用いて生産され、(中略)一国の生産者が有している製品の生産能力を拡大できるかどうかは、自らのサプライチェーンから調達できるかにかかっている。そして調達が最適化されるのは、そのサプライチェーンに関わる貿易相手全てが中間材の輸出を邪魔したり遅延させない場合だ“

と、現在のChinaを主な中間材製造サプライヤーに頼る日本企業に向けて書いたかのような言い回しだ。
さらに、

”自分たちが関係する通商政策によって国境を跨いだ供給が阻害されて、自由主義的な貿易体制の便益を薄まってしまうかもしれない不確実性の中で、製造業者、輸出業者、輸入業者、そしてこうした業者から品物を引き受ける運輸企業は、何とか計画を立てるほかない“

と指摘している。
また今回のコロナショックにより、世界からChinaに非難の声が集中しているが、実はその中で世界中の企業が懸念しているのが、Chinaをグローバルサプライヤーとして今後も位置付けていいのか?という点に尽きる。
安倍総理は4月に入った段階で、日本企業の日本回帰もしくは他の東南アジア諸国への移転を進めるにあたって、4,000億円以上の補助金予算を計上した。
Chinaは、そうは言っても日本だけはそんなことはしないだろうと、タカを括っているかもしれない。
しかし、多くの製造業や白物家電等、China頼みのサプライチェーンに警戒感を示す日本企業は多い。政府が補助金を出すとなれば、重い腰を上げる企業が出てくることも考えられる。また、設備投資の機会を伺っていた企業には、渡りに船という感情が起きても、否定はできない。

コロナショック後は、すぐそこにまでやってきている。
各種の企業にとって、今回のコロナショックは大きな試金石ともなっているのだ。

新型コロナウイルスとイマニュエル・カント

拙コラムは、野放図にテーマを決めず思ったままを書いているので、時に、こんなことも書いてみる。

新型コロナウイルスが生み出したものは、グローバル経済の停滞と、人の移動を制限することは経済の停滞をもたらし、しかもそれが人々が考えている以上に深刻な事態に直結してしまうと共に、それに対し存外、我々はなす術が限られていると明らかにしてしまったことだ。

何も日本に限ったことではなく、現在、爆発的な感染者と死者を出している欧米各国では、たちどころに失業者が溢れてしまっていて、震源地でもあり世界に先駆けて経済活動が戻ってきたChinaも例外ではない。では、今回の新型コロナウイルスに対し、歴史に残る正しい解を導き出した国は、一体、いくつあるだろうか?

日本と同じ島国である台湾は、地政学的な問題もあり、また経済活動の問題もあって、いち早く鎖国政策をとった。

韓国では、ドライブスルー方式等の公開のPCR検査を採用し、その対象を広く拡大することで、感染者の掌握を行いながら都市封鎖につなげ、感染拡大を防止した。

日本は、クラスター化した感染者の徹底追跡を綿密に行い、一つ一つ潰していく方針をとった。つまり、大きくは感染者の全体像を掌握するか、発症者に焦点を絞っていくかの違いとも言える。

それが、正しい選択であったか否か?は、新型コロナウイルスのワクチンや特効薬が開発され、このウイルスが引き起こす感染症が、季節性インフルエンザと同じように人類と共存できるようになって初めて、明らかになる。

人類にとって初めて対峙するこのウイルスが、私たちに教えたものはなんだろうか?

Chinaでは武漢市封鎖に始まり、湖北省が封鎖され、また大都市に飛び火した段階で、次々に都市封鎖が行われた。その後、欧米諸国にウイルスが拡大し、多くの死者を出したことによって、結局、行き着くところはChina中央政府の失政とChinaの影響を強く受けていると言われているWHOに批判の矛先が向いている。

実際にやるかやらないかは別として、世界に伝播させてしまったChina政府への責任追及を行い、それをお金に換算すると、日本円で500兆円規模に上ると言われている。仮にChina政府が、世界に影響を与えている経済規模を振りかざし強気の姿勢を見せると、先進国のChina離れが加速するかもしれない。China政府としてもそれは何としても避けたいのか、現在、徹底したマスク外交を展開している。日本のある都市は、Chinaに支援物資として送ったマスクの10倍のマスクがChinaから贈られた。好意的に解釈すれば、Chinaは義に厚い国ということになるが、斜めから見ればこの機にマスク外交を徹底することで、コスパの良い外交を行っているとも言える。

 

人間の義務と権利について考えたイマニュエル・カントは、『純粋理性批判』の中で「正義」とは何か?を①幸福の最大化②正義と自由③美徳の報いという三つの問いから考えた。

ここで、カントは人間とは純粋に理性的な存在であり、それを希求できる存在であるとした。それは「理性の能力」と「自由の能力」という言葉に置き換えられる。一方、人間は「感性的」な存在でもあって、物欲だったり性欲だったり本能に近い面もあるとした。

また、カントの言う「自由」とは自律的行動原理に基づく、目的化された行動原理、という一見するとよく分からない行動原理を言う。簡単に言えば、他人が自分の行動を決めるのではなく、何故行動を起こすのか?も含め、自己決定権を持ち目的を明確にして、行動自体も自己決定に従って行う。それができるのが、人間に与えられた自由だ、とカントは説いた。

また、人間が美徳を発揮して、より道徳的な行動を行えるか?は、「道徳法則に従うのみならず、道徳法則のため」の行動でなければならない。これまた、よく分からない言葉の羅列だが、つまりカントは、人が道徳的であろうとするには、正しいことを正しい理由に従って行動すればいいのだ、と言っている。

これらを煎じ詰めれば、カントはそれほど難しいことを言っているわけではなくて、人が自分の人生を生きるには、正しいと思える行動原理に従い、正しいと思える理由によってその人の人生を生きる。自分の人生を生きるという一見、功利的に見える生き様であっても、それが正しいものならば、自分の命を維持して道徳的に生きることの価値を損なわない。

 

街を歩いていて、すれ違う人がマスクも着けないで咳をしたとする。今であれば、「すわっ!コロナがー!」と不安になる。では不躾に咳をした人を責められるだろうか?もしかしたら、その人は花粉症もちで気管支が弱く、他人の香水やChinaから飛んでくるPM2.5を吸い込み咽せただけかもしれない。

すれ違い様に咳をされて、嫌な思いをした人については、どうだろう?その人は、テレビで散々報じている人工呼吸器をつけて苦しんでいる重症患者の姿を見て、自分自身がCOVID−19を発症したくないと思っているかもしれない。あるいは、家族に基礎疾患患者がいて、感染すれば家族がたちまち重症化の危険に晒されるから、家に持ち帰りたくない、と思って怪訝な顔をしたかもしれない。

営業自粛に従わないパチ屋が、ネット上で叩かれたりするのも、東京に住んでて感染したくないから地方に出かけていく人が叩かれるのも、叩く側の正義に従った行動だ。では、叩かれている側に正義はないのだろうか?

 

新型コロナウイルスを相手に、右往左往する人類を見て、カントは何ていうだろう?

 

「とどのつまり、正しい理由で正しい行いをせいて、オレ言うたよな!」

「右見ても左見ても、他人の言う言葉に左右されっぱなしやんけ!自分で正しいことを考えて、正しい行いをせんかい!」

 

くらい、言ったかもしれない。