私は、本業で上場企業から町の工場まで、幅広いクライアントを抱えている。
自粛要請が拡大し、都道府県が物流を除き、事実上のロックダウンに置かれている中、痺れを切らしたクライアントの多くが、経済が再開した時のため、今から資材調達その他に動き始めている。
私の仕事柄、サービス、飲食といった業種には縁がないのだが、それでも、企業が活動再開するとは、人が動くということなので、それにつれてサービス業が動き出し、店舗改装、店舗内部の再整備に動き出している企業が増えてきた。
もちろんその一点だけを取り上げて何かを言うつもりは無いが、痺れを切らしているという表現は、まさに人々の心の中を、そのまま表している言葉だと思う。
一次補正で現金だけで約16兆円規模の対策が打たれ、徐々に現金が国民に行き渡り始めた。次に問題になるのは、二次補正、三次補正に関して、具体的にどれほどの規模の現金が、追加で市中にバラまかれるか?だ。
以前から、拙コラムで繰り返し指摘したように、古くはバブル崩壊まで遡り、アジア通貨危機、リーマンショックで国家破綻を叫ぶデフレ容認論者、日本破綻論者の期待も虚しく、日本経済はそれでも堅調に成長を続けている。
非常に象徴的なのは、低迷する日本経済に対し、多くの国民がデフレ脱却を期待していたにもかかわらず、第一次安倍、福田、麻生、鳩山、菅、野田、第二次安倍の各政権のうち、デフレ脱却に本気で動いたのが、第二次安倍政権のみだということだ。
日本の財務官僚には、アレルギーのようにインフレを嫌う傾向があり、また財政健全化を進めなければならないという、ある種の呪縛がある。
そこには、企業の収益確保と同じ、税金をいっぱい集めたやつが偉い、という呪縛でもあるだろう。
財務官僚は、あの手この手で新たな税金を打ち出し、少しでも多く税金を集めようとする。翻って経済学者の多くが、特にリフレ派の多くが、経済のパイが大きくなれば、税収は増加すると繰り返し言っているにもかかわらず、財務官僚の頭は固いままだ。
私はTwitterをよく利用するが、一部の政治家は、いまだに財政健全化を言う。
日本人一人当たり、800万円の借金がある、という財務省官僚の呪いだ。
今回のコロナショックのような有事の際、経済活動が再開するまでの間、ほぼ際限なくお金を出し続ける必要があるだろう。
そのような形で、経済活動が再開するまでの期間、人々は国家と共に生きて行かなければならない。では、経済活動が再開した場合、人々の目線はどちらに向くだろうか?
リチャード・ボールドウィンは、そのコラム『COVIDー19と通商政策pt.7』の中で、
“多くの(医療)製品は、複数の国境を跨いだサプライチェーンを用いて生産され、(中略)一国の生産者が有している製品の生産能力を拡大できるかどうかは、自らのサプライチェーンから調達できるかにかかっている。そして調達が最適化されるのは、そのサプライチェーンに関わる貿易相手全てが中間材の輸出を邪魔したり遅延させない場合だ“
と、現在のChinaを主な中間材製造サプライヤーに頼る日本企業に向けて書いたかのような言い回しだ。
さらに、
”自分たちが関係する通商政策によって国境を跨いだ供給が阻害されて、自由主義的な貿易体制の便益を薄まってしまうかもしれない不確実性の中で、製造業者、輸出業者、輸入業者、そしてこうした業者から品物を引き受ける運輸企業は、何とか計画を立てるほかない“
と指摘している。
また今回のコロナショックにより、世界からChinaに非難の声が集中しているが、実はその中で世界中の企業が懸念しているのが、Chinaをグローバルサプライヤーとして今後も位置付けていいのか?という点に尽きる。
安倍総理は4月に入った段階で、日本企業の日本回帰もしくは他の東南アジア諸国への移転を進めるにあたって、4,000億円以上の補助金予算を計上した。
Chinaは、そうは言っても日本だけはそんなことはしないだろうと、タカを括っているかもしれない。
しかし、多くの製造業や白物家電等、China頼みのサプライチェーンに警戒感を示す日本企業は多い。政府が補助金を出すとなれば、重い腰を上げる企業が出てくることも考えられる。また、設備投資の機会を伺っていた企業には、渡りに船という感情が起きても、否定はできない。
コロナショック後は、すぐそこにまでやってきている。
各種の企業にとって、今回のコロナショックは大きな試金石ともなっているのだ。