倉沢良弦『ニュースの裏側』

いろいろ、書いてます。お仕事のご依頼は、ryougenkurasawa@gmail.com。

China経済の栄華の終焉?

https://econ101.jp/%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%83%a2%e3%83%b3%e3%83%bb%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%83%ab%e3%82%a4%e3%82%b9%e3%80%8c%e8%b2%a1%e6%94%bf%e3%83%ab%e3%83%bc%e3%83%ab-%e8%b2%a1%e6%94%bf%e3%81%ae%e3%81%9f%e3%82%81/

サイモン・レン=ルイスの財政に関するコラムを読んでいると、今、まさに日本や世界が直面している財政出動に関して、そのルールとは何か?という古くて新しい疑問にぶつかる。
現在、欧米も日本もコロナショックによる株価下落が起きたが、その後、幾らか持ち直し、当初予想されていた株価暴落は避けられた。一つには錦繍システムが崩壊したわけではないので、ミクロ的な経済が落ち込んでも、コロナショックが過ぎれば、いずれ状況は改善するという見方があるからだ。
ただ、ミクロ経済的には、アメリカでは1,700万人の失業者を生み、日本ではサービス業をはじめとする業種に大きな影響が出ている。
これに対し、アメリカでは220兆円規模の経済対策をするとしており、また日本政府は総額で109兆円の経済対策を行うとした。
拙コラムで指摘している通り、これはリーマンショック時の倍に相当する対策となる。日本の場合、GDPデフレーターが横ばい状態で推移していたのが、昨年秋から冬にかけて消費増税の影響から鈍化し、そのごコロナショックを受け、年率で10%のマイナス成長の可能性が出てきた。
正規雇用の雇い止めが起きているので、失業率も上昇するだろう。政府の仕事のほとんどは仕事がない状態を作らないということであって、仕事があれば労働意欲がある人は所得を得ることが出来る。一定水準の所得があれば、一定程度の生活レベルを保てるので、それは国民生活における幸福感と相関する。
ここでサイモン氏が指摘するのは、政府の都合で財政ルールを設けてはならない、ということだ。もっと言えば、政府の都合で財政ルールを変更したら、それは財政ルールとは言えないということだ。財政の下支えを行う財政の均衡は、時の政府に関係なく一定程度の成長率を維持するために機能しなければならない。勿論、サイモン氏が指摘しているのは平時における財政規律の問題で、金利が下限に達している状態での財政ルールは緊縮を行なってはならないという大前提がある、とサイモン氏は指摘する。これを範とするなら、既にマイナス域に突入している日本のコール市場は、2000年代以降ずっと流動性の確保のために低いままであって、ようは市中の銀行での取引額の伸び悩みを示す。コール市場というのは、日本国内の決済の最終段階であって、そこでの金利上昇が見込めない中、日銀は金融緩和で国債を買い続けてきた。

https://www.crinet.co.jp/economy/indicator/rates/1708.pdf

金融緩和とは、金融市場における流動性を刺激するとでも言えばいいだろうか?
市中の銀行が保有する国債を日銀が買い入れ、当座預金に積み上がった金利分がそのまま市中に流れてくれないといけない。同時に、コールレート金利を下げ止めておくことで、銀行間決済の流動性を高める狙いがある。つまり、企業の設備投資や企業の保有資産の流動化を図りたいのだ。勿論、日銀目標の年率2%のインフレ目標が達成されれば、日銀が保有する国債を売却し、当座預金残高を減らせば良い。
というか、市中で資金が動き出せば、銀行は日銀当座預金にお金を置いておく必要がない。企業に貸し出した方が、より多くの金利収入があるからだ。

ここで重要なのは、例えばリーマンショックサブプライム問題で金融システムが世界的に崩壊するとか、大規模な戦争が起き戦時国債をハードカレンシーを保有する国家(アメリカ、EU、日本、イギリス、スイス)が大規模に行うとか、世界に波及するような有事の際は、各国経済がメルトダウンすることを警戒し、大規模な金融緩和や政府紙幣を発行して備えることになる。
ところが、今回のコロナショックにおいて今の所、金融システムに大きな変化は見られない。何度も取り上げているが、コロナショックはいずれ鎮静化する為、株式市場や為替市場は各国の経済対策だけを注視している。
勿論、Chinaに軸足をおいたサプライチェーンを構成している製造業は、今般のChinaショックとも言える事態を想定し、サプライチェーンを大きく変更する必要性に迫られている。それが、4月7日に安倍総理が発表した2,435億円規模の企業の国内回帰支援と第三国への移転支援に伴う予算だ。

https://www.epochtimes.jp/2020/04/54657.html

既に、アメリカも同調するとの政府関係者の声が出ており、これは欧州企業もそうだろう。これに一番肝を冷やしたのは、Chinaなのは間違いない。
つまり、これまで順調に国内経済を豊かにするための改革開放路線を執ってきたChina中央政府の足元を掬うような発言だからだ。
China企業は、現在の世界的な経済の冷え込み、株価下落のタイミングで、既に欧州の企業買収に乗り出しているとの報道もあり、欧州各国は警戒感を高めていると共に、その対策に乗り出していると言われている。
世界の工場になることで、世界の富を集め、経済力を強めてきたChinaであるが、サイモン氏の指摘通りなら、その栄耀栄華を味わい国民の幸福度を高めてきたChinaは思わぬ落とし穴としてのコロナショックを被っているだろう。China政府は、低迷した国内経済の下支えとして既に日本円で500兆円規模の地方への公共事業を行うと発表した。一方、アメリカが執拗に迫っている人民元の自由化を出来ないとなれば、China共産党が進めてきた統制経済が綻ぶ可能性がある。何故なら、外需頼みの経済だからだ。つまり、外国企業がChinaから脱出する事態が拡大すれば、外貨が逃げていくことになる。そんな時に、アメリカが言うような人民元の変動相場移行など行えば、たちまち、国内の人民元資産が暴落する。

http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKBN21Q0PY.html

日本政府が、このタイミングで低所得国債務の救済のために、IMF拠出を決めたことは、他でもないChinaを牽制する狙いがある。
Chinaが最も困るのは、世界の工場でなくなることだ。ところが、この日本政府の表明に対しChinaは今の所、何も表明していない。これは、出来ないのではないだろうか?
China国内のコロナショックは終息したとは言えず、未だChinaを経由した外国人はどこも受け入れを拒否するか、入国後、自費で2週間の経過観察をしなければならない。つまり、各国が事実上の鎖国状態にある中で、今回のコロナショックの影響を一番受けているのは他ならないChinaであろう。
政府は経済だ。
最悪は習近平失脚もあり得る。