倉沢良弦『ニュースの裏側』

いろいろ、書いてます。お仕事のご依頼は、ryougenkurasawa@gmail.com。

コロナウイルスショックで動き出す世界

世界中で確認されているだけで、既に50万人に達した新型コロナウイルス感染者であるが、その勢いは欧州やアメリカから、東南アジア、アフリカ大陸へと広がり始めた。
従来のコロナウイルスが引き起こす感染症のデータから見て、急激な感染者の増加は、急激な低下を起こすことが分かっている。
以前から指摘しているように、今回のコロナウイルスショックは歴史上のスペイン風邪のようなものではなく、世界中がChina依存を続けてきたグローバルなサプライサイドの問題であって、特に人件費の問題でChina依存を抜けきれなかった先進国にそのしわ寄せが来たと見るべきだ。
ここに来て、シェア争いを続けてきた原油市場が、大幅な下落を見せている。
原油にはその生産地と種類によって、使用目的が選別されていて、各生産国が互いに棲み分けを行ってきた。その鍵を握ってきたのが、シェールオイルを増産してきたアメリカとロシアと中東諸国だ。特に中東諸国で生産される石油は、ガソリンやジェット燃料に使われる形質低硫黄原油と言われるもので、ロシアとシェア争いを続けているサウジアラビアがほとんど投げ売り状態で取引を行っている。コロナウイルスショックにより需要が減った所に、生産過多の状態を作ることで、価格破壊を引き起こしているのだ。現在、1バレルあたり25ドル程度が先物市場価格となっており、中東以外の産油国は国家体制すら傾きかけない値崩れを起こしている。

https://newspicks.com/news/4767638?utm_campaign=np_urlshare&invoker=np_urlshare_uid4588482&utm_source=newspicks&utm_medium=urlshare

© chartparkより抜粋

徐々にChina国内における中間材等の生産体制が戻ってきてはいるが、欧米各国がコロナショックで身動きが取れないため、市場でダブついた原油はますます値を下げていて、予断を許さない。
サウジアラビアはロシアを牽制していて、ロシアのプーチン大統領は、中東各国にミサイルを撃ち込まんばかりに怒り心頭だろう。
サウジアラビアはロシアと減産体制について話し合いの場は設けていないとして、こちらも一歩も譲る気配はない。

サウジ「ロシアと協議していない」、産油国の協調拡大も否定 https://reut.rs/2wJVC2t

加えて、Chinaとベネズエラとロシアの分断を図りたいアメリカは、ベネズエラに更なる制裁を科したばかりだ。しかも、ベネズエラマドゥロ大統領に麻薬組織関与の疑いで起訴した。これは以前から、マドゥロ大統領周辺で囁かれていた事実だったのだが、アメリカはベネズエラ国内の混乱を助長するものとして明言を避けていた節がある。それを、コロナショックの最中に表面化させたのだ。これは明らかにロシアとの分断を絶つ目的であり、同時にベネズエラの大西洋岸地域の港湾使用権を欲しがっていたChinaを牽制するものだ。
プーチン習近平も、麻薬取引の関与が疑われる国家元首との付き合いなどしたくもないだろう。まして、Chinaはコロナショックの引き金を引いた国であり、ロシア国内も感染拡大を阻止しなければいけない重大局面を迎えている。

https://www.asahi.com/articles/ASN3W1QF9N3VUHBI02L.html

現在、アメリカ国内でのコロナウイルス感染者は10万人を超え、ニューヨークでは都市封鎖の動きすら出てきている。Chinaが自国内の経済活動を再開することが出来れば、次には韓国や日本が再開することになるだろう。既に、各国共にその段階を見据えて動き出しているのは、拙コラムでも触れてきた通りだ。
一方で、工業製品の生産体制と共に、原油生産も各国が綱引きを始めている。
むしろ、そちらの方が注視する必要が出てきたと言えないだろうか?