倉沢良弦『ニュースの裏側』

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日本政府に課せられた使命は、直ちに日本経済を立て直せ!

新型コロナウイルスの蔓延は、ついに首都東京封鎖に至るかもしれないというところまできた。
ただの風邪が、1,300万人都市を揺るがしているのだ。テレビやラジオでは朝から晩まで不要不急の外出は避けろとか、感染症予防策についての解説が繰り返されてむしろそのことに慣れっこになってしまってもいる。
また、毎日感染者数と死亡者数が報じられ、ただの風邪が一躍スターダムにのし上がった。
これは、そのことを揶揄したいのではなく、季節性インフルエンザ同様、必要な予防策を講じ移らない、移さないという大前提を踏まえた上で、冷静に正しく恐れることを推奨したいだけだ。

今回のコロナショックについてはこれまで幾つかの視点で考えてきた。例えば、China政府がもっと早く的確に情報発信して、感染拡大を防止する手立てを打っていれば、世界的にこのウイルスが蔓延することはなかったのではないか?とか、そもそも世界経済があまりにもChina依存に陥った結果、サプライチェーンは機能不全を起こし、世界経済がガタガタになってしまったとか?だ。後者については、以前にも触れたように、China依存の製造業はいずれ大きな代償を払わせられるという指摘は数年前からあったし、私もChina依存から脱し、他の東南アジア諸国に活路を見出すかいっそ日本国内に回帰しなければ、日本の製造業は立ち行かなくなると指摘してきた。
既にChina国内においては一定程度、経済が回復する基調が見て取れる。製造再開した工場も出始めた。中間材の製造ラインが戻れば、いずれ滞っていた日本国内の市場も復活するだろう。

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00553907

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200316/k10012334481000.html

https://japan.cnet.com/article/35151491/

世界的に不足しているマスクについても、China国内の工場が一手に引き受ける形で、フル稼働しているし、日本のスズラン(愛知県名古屋市)は、新たな工場をChinaに新設し、2022年の稼働を目指すことが発表された。これは季節性インフルエンザの毎年の蔓延も踏まえ、欧米各国の公衆衛生観念の変化を見据えたものとも言える。テレビ中継等を見れば分かるように、そもそも欧米ではマスクそのものを使用する習慣があまりない。それどころか、挨拶の時のハグや、頬にキスをする生活習慣のお陰で、コロナウイルスによって感染する感染症が拡がりやすい土壌があった。コロナショックは、欧米人の生活習慣までも変化させようとしている。
ただの風邪が、人類の歴史を左右してきたのは、スペイン風邪と同様だ。
経済のグローバル化と情報が瞬時に伝わる今の時代こそ、より変化に順応できることの重要性が求められるので、欧米人は柔軟に切り替えを始めている。ただ、喉元過ぎれば、の例えもあり、本当に習慣化できるかどうかだが、少なくとも今回のコロナショックでマスク自体が日常生活にある状況が作られれば、マスク着用にこれまでのような抵抗感は無くなるだろう。

Chinaがこの絶好の機会を逃す筈はない。市場としてのChina国内は、経済の循環が元に戻ったとは言えないが、Chinaに製造拠点を持つ外国企業は、既にコロナショック後を見据えている。それを見越してChina中央政府は大規模な金融緩和と財政出動に踏み切った。

https://gentosha-go.com/articles/-/25873

金融緩和の主なものとしては金利の引き下げと、法人税減税、更には銀行の預金準備率の引き下げが挙げられる。これは企業の資金の流動化を促進させることが狙いだ。加えて、これまで遅れていた地方都市へのインフラ整備に500兆円規模の財政出動を行う。つまり、国内経済の再開に合わせ、一気に所得格差を縮める策を講じてきた。これは、昭和50年代に田中角栄が行った政策と酷似している。

日本では、今回のコロナショックの影響が非正規雇用、特に収入の先が見えないサービス業、飲食業に直接的な影響が出ている。大和総研のチーフエコノミストである熊谷亮丸氏は、大和総研ではこのままの経済状態が年内一杯続けば、GDPの落ち込みは40兆円を超えるのではないか?と試算していると言う。
そこで、政府としてはこの景気の落ち込みだけでなく直接的に影響を被っている非正規雇用やパート、アルバイトや所得の落ち込みが著しい人に対しての対策、そして日本経済の下支えを行っている中小零細企業に対する対策をどうするのか?を検討を進めてきた。
多くの人が勘違いをしているのは、政府は今回の景気の落ち込みに対して、30〜50兆円規模の景気対策を行うことはかなり早い段階で決まっていたということだ。特に欧米諸国ではゲンナマを給付するという直接的な手段を講じることで、対処使用としているが、日本政府は、それを段階的に進める手段をとった。
政府批判をしたい人々は、アベノマスクと揶揄するが、それはメディアが単に報道の先走りを行っているに過ぎない。
既に消されてしまったようだが、官邸の対策チームに関わった経済産業省の浅野大介氏は、今回のマスク配布に至った経緯の詳細を語っていて、サージカルマスクの配布先を考慮し、とにかく早急にまた役所等で人々が並ぶことによるクラスター化を避ける為、郵送で一般的な平均世帯人数をベースに送付を決めたとしている。その判断には、合理性があり根拠も極めて明快だ。ただ、広報の仕方が不味かったというのは浅野氏も認めている。
景気対策について、自民党の岸田政調会長は政府との間で所得が減った世帯に対し一律30万円支給で合意したと語った。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200403/k10012366431000.html

これも、ある意味では優先順位の問題で、まずは喫緊に現金が必要となる家庭にまず届けるということを前提に準備を進め、次に、個人事業主中小零細企業にそれぞれ満額で100万円と200万円を給付するとの報道が出た。これも政府関係者からの情報で、これまで同様、政府のブリーフィングの前に情報をリークし、市場の反応を窺うという戦略をとっている。

https://www.asahi.com/articles/ASN447KL6N44UTFK009.html

日本には約200万人の個人事業主がいる。仮に一律満額を給付したとして、それだけで2兆円規模だ。更に日本の企業の90%以上を占める中小零細企業の200万社を加えると給付対象だけで約6兆円から7兆円規模の直接給付となる。
次に、従業員1000人規模の企業から大企業まで直接現金でテコ入れするとの予測もあり、直接給付だけで相当な規模にのぼる。
勿論、これは現在のコロナショックの渦中の対応であり、コロナショック後、更に財政出動を準備していると言われている。
少なくとも、今回のコロナショックは経済に与える影響がリーマンショックなみということが分かってきた段階で、政府はこれだけの予算規模の対策を計画してきた。それが安倍総理が早い段階で、前例のない対策に踏み切ると予言していた中身だ。
ここで欧米先進国との違いが鮮明になったのは、欧米各国では、ほぼほぼ直接現金を届けるのみの政策だったが、日本政府はそれを段階的に、まず優先順位を明確にして、同じ予算規模ならどこにその予算を注力するのが一番影響が大きいか?を考慮しての対策だ、ということだ。
麻生財務大臣リーマンショック時の一律給付に対して、あの反省を踏まえて、と語ったことに批判が集まったが、金庫番の大臣が、何でもかんでも金を刷りまくるなどと、口が裂けても言うわけはない。
麻生大臣は、これら政府の政策を踏まえた上で、語ったに過ぎない。

リーマンショック時の麻生総理の対応をかろうじて知る身としては、今回は財務省に拍手を送りたい。
と言うか、日本政府は本気で日本経済の立て直しに来ている。
当初見積もりの30兆円を軽く凌駕して、本当にGDPの10%、50兆円規模もありうる。
これは大変なことなのだ。