倉沢良弦『ニュースの裏側』

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結果的に正しかった日本の対応

昨日3月25日、東京では新たに41人の新型コロナウイルス感染者が発生し、東京都知事は緊急事態であるとして、週末の不要不急の外出を控えて欲しいと記者会見を行った。1,300万人の巨大都市東京で、外出を控える要請が出たことで、ウイルス感染者の拡大を抑え込めるかの重大な局面になったとメディアでは一斉に報じている。
また、有名な芸能人がウイルスに感染しCOVID−19を発症したということで、一つには誰でもこのウイルスに感染するリスクがあると報じている。これは感染拡大に対処するという意味で一定程度の効果があると考えられるし、感染予防策を国民一人一人が徹底するという注意喚起にも通じる。
SARSCoV−2の正体は、ほぼ全てのデータが出揃い、協力な感染力を有しているが、発症後の致死率に関しては当初考えられていた発症者の3%という数字には至らず、1%という数字に落ち着きそうだ。つまり、季節性インフルエンザの10倍の致死率ということになる。元々、インフルエンザを含むこれらウイルス性感冒症の感染拡大と収束までの推移は過去のデータから急速に増加し、一気に下降する。

今回のSARSCoV−2に関しては、類似のSARSCoVを参考にすれば、やはりウイルス性感冒特有の急速な感染者数の増加とピークアウト曲線を描く。

そもそもこれらウイルス性感冒とは何か?については国立感染症研究所が分かりやすく種類や症状に関して解説している。元々自然界に多く存在していたものが、変異して人に感染するようになったものも多く、SARS、MERSや今回の新型コロナウイルスがそれにあたる。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/2482-2020-01-10-06-50-40/9303-coronavirus.html

China国内の感染者数の爆発的な増加に関しては、様々な論文が報告しているように、動物由来のウイルスが人−人感染する遺伝子の変異を繰り返す初期段階として、急激に感染拡大したこと、人口が集中する都市部から感染が広がったため初動対応の遅れが感染拡大を招いたこと、China人特有の抗生物質多用な生活習慣が新興ウイルスに対して免疫力を発揮しきれなかった可能性、等々が指摘されている。
また武漢市、湖北省浙江省では新たな感染者の発生数が少なくなってきており、従前のウイルス性感冒と同じ感染者数増減の曲線を描くのは、WHOの感染者数の推移を見れば明らかだ。

日本でも東京都のように一時的に増加傾向は示しているが、全体として見ればピークアウトの段階に入っていると考えられている。
日々地上波等で感染者数の総数をグラフにしているが、これは非常に悪質と言わなければいけない。ウイルス性感冒の増減は感染者数の発生状況で判断すべきで、それによって感染状況を確認すべきだ。
また、何度も議論になっているPCR検査についても、第二類感染症に指定された今回の新型コロナウイルスは、感染確認された時点で、隔離措置がとられ約二週間の経過観察が必要となる。経過観察するということは、ベッドが一つとられるということだ。日本政府と専門家会議がとった戦略は、予防策の徹底した普及と、不必要なPCR検査を行わないというもので、COVID−19発症者が出た場合、感染経路を徹底して追いかけるというものだった。Chinaにおいて新型コロナウイルス発生が確認されて以後、あれだ多くのChinaの人々が訪日しているにも関わらず、爆発的な感染に至らなかったのは、この作戦が功を奏したと言わざるを得ない。その最たるものが、COVID−19による死者数だ。悪戯にPCR検査を行い、医療機関を混乱させることなく、あくまでも発症者に焦点を絞ったこと、感染の懸念がある者は、不要不急の外出を控え、自宅で安静にしていることと、ウイルス性感冒全般に不可欠な予防対策の徹底によるところが大きい。
欧州各国でもアメリカでも、日本の方式をとる国が多く、ドライブスルー検査といった闇雲なことをやることで、医療機関での院内感染や、確度の低い検査に頼らない措置が重要であるとの認識が広がっている。
日本では、地上波の多くで新型コロナウイルスへの不安を煽り、PCR検査が大切だと自称専門家が喧伝したが、一方でネット上で感染症の専門家がいかに正しく恐れるべきか?を地道に普及したことで、地上波での論調も以前のようなものとは様変わりしてきた。
拙コラムでも早くから指摘してきたように、3月中の収束は概ねその予想通りにいくだろう。
勿論、必要な予防策、とりわけ感染しない、感染させないという意識で、予防策に徹するのは当然だ。

最後に、昨年から現在までに、毎年感染拡大している季節性インフルエンザの感染者数は、例年の四分の1に抑えられているのだ。
つまり、新型コロナウイルスによって、実はインフルエンザで年平均2,000〜3,000人亡くなっている数字が四分の1に抑えられているのである。
これは非常に大きな示唆を含んでいる。

次は日本政府の経済対策について考えてみたい。