倉沢良弦『ニュースの裏側』

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日本の在日コリアンの問題は根深い

日本に在日コリアンが定住するようになった起源は、伊藤博文公以降からである。
明治維新による日本の急激な変化は、それまでの海外との交流を遮断していたものから、新たに国際社会に出て行く日本を形成する上で、欧米諸国との交易と共に日本の国力を増強するための手段を模索するものでもあったと考えていいでしょう。
その端緒が、李氏朝鮮時代を終え下関条約をきっかけに新たに国交を結ぶこととなった明治政府の時代に遡ることが出来る。当時の清の支配下にあった李氏朝鮮大韓帝国として独立させ、日本と国交を結ぶ形でロシアと清との関係に楔を打ち込む狙いがあったのです。また、長年、宗主国である清の圧政に苦しんできた李氏朝鮮の解放を目指すものでもありました。
日本統治に反対した李承晩らの起こした、臨時政府樹立の動きは、日本の影響下にある朝鮮半島を解放するという名目の下、中華民国が日本を排撃する目的があったもので、李承晩らはそれに呼応したと考えられます。つまり、日本政府による独立国家としての大韓帝国の樹立と併合の目的と、中華民国の影響下にあった反対派との間の対立の激化が、朝鮮半島全体の混乱の起源と言ってもいいかもしれません。
やがて、第二次世界大戦の敗戦を期に、共産党の台頭によってアメリカとの覇権争いを睨むソ連の対立は、日韓併合の解消、日本の武装解除朝鮮半島の国連軍統治と、ソ連朝鮮半島への侵攻に形を変え、38度線による半島の分断へと繋がります。
元々、日韓併合時代から日本に職を求めて来日する朝鮮人も多く、日韓併合後、朝鮮戦争等の理由により荒廃が進んだ朝鮮半島から逃れるため、日本に来た朝鮮人の末裔が現在の在日コリアンです。在日コリアンの歴史の中で、日本国内で差別の対象になったのも事実としてありますが、同時に在日コリアンには特別在住者という独自の資格が与えられ、日本社会にコミュニティを形成し、或いは日本社会で努力をしてそれぞれの地位を確立してきました。2世、3世の在日コリアンの中には、日本国籍を取得し日本人として生きる道を見出した者もいますが、自分たちのアイデンティティである韓国籍北朝鮮籍を残し続けている者も多くいます。
日韓併合が終わり、北朝鮮が樹立されて以後、在日コリアン朝鮮半島内でも居場所を無くしてきたというのが実態ではないでしょうか?
北朝鮮在日コリアンに対しての差別意識が高く、韓国国内でも在日コリアンに対しての見方は冷淡です。
韓国で言えば、旧来の保守的な勢力と革新派の親北朝鮮のほかに、そのどちらでもない在日コリアンが存在します。
第二次世界大戦後、韓国政府は日本から帰還する在日コリアンの受け入れを拒否し、反して北朝鮮朝鮮半島への帰国事業を積極的に推進しました。当時、北朝鮮はこの世の楽園と言われ、在日コリアンと結婚した日本人女性も数多くこの帰国事業によって北朝鮮に渡りましたが、実態は全く逆で在日コリアンと日本人は迫害の対象となっていきました。一方、韓国政府が在日コリアンの帰還受け入れを拒否したため、朝鮮籍を持つ者から戦勝国である在日コリアンの権利保障を求める動きが活発化します。本来、第二次世界大戦時の韓国は日本の一部であったため、戦勝国という位置付けに法的根拠は無いのですが、在日コリアンの多くは日本社会で一定の地位を求め定住を希望していたと言われており、現在の在日コリアンの問題の元々の発端は当時の日本政府の対応のマズさにあるとも言えるでしょう。
敗戦国であった日本政府は、結局、在日コリアンに一定程度の譲歩をするという形で在留許可を与えざるを得ませんでした。ところが、当時から日本人の在日コリアンに対する差別意識が無かったとは言えず、在日コリアン自身も自分たちの居場所を求め、出自が不明瞭でも成功する可能性がある、例えばヤクザ組織や芸能界へと進出するきっかけになりました。
時代を前後して、北朝鮮地域出身者が所属する朝鮮総連(在日本朝鮮総連合会)と民団(在日本大韓民国居留民団)が結成され、在日コリアンはどちらかに所属するようになり、朝鮮戦争の激化により分断された朝鮮半島情勢は、在日コリアン達にとって帰る場所が無い状況に追い込んだ結果、この二つの団体が在日コリアンの受け皿となっていきました。
また、これらの歴史的背景は、在日コリアン通名使用に繋がります。つまり、朝鮮半島にも帰れない、日本で在日コリアンとしても生きられない、ならば自分の出自を隠して日本社会で生きていく以外に道はない、となっていったのです。
では、現実問題として在日コリアンが再び、自分たちの祖国である朝鮮半島に戻れるでしょうか?
既に2世、3世、4世になる彼らは、ハングル文字の読み書きも話すことも出来ない者が多くいます。また、北朝鮮国内の情勢は多くの報道で知っていて、朝鮮総連所属者は必然的に日本国内での活動拠点として総連を利用するように仕向けられ、民団は事実上帰国を拒否した形の韓国政府の後押しをする結果となり、日本社会での在日コリアンの地位確立を推し進めてきたのです。
日韓関係の問題が拗れるきっかけになったのは、実はこれらの歴史的背景を抜きには語れません。
日韓関係が良好であるのも、悪化するのも、その時々の韓国政府の意向に左右されます。つまり、保守政権で資本主義の下、韓国経済の発展を目指す政権なら日本との協力関係を維持しようとしますが、一旦、社会主義よりの親北路線の政権が出来ると、真っ先に日本叩きに走ります。
現在の文在寅政権は、親北よりと言われていますが、むしろ朝鮮半島の統一が目的です。そのため、日本との関係を見直し、アメリカとの同盟関係破棄も辞さずという強硬な姿勢に見えるのは、朝鮮半島統一が、日韓併合以前に歴史を巻き戻すことが目的で、そのための困難な道のりの選択だと言っているわけです。
これに反発しているのが、保守派で、文在寅の言うことは荒唐無稽であり、北朝鮮との100倍もの経済格差を埋めようとすれば、韓国経済が崩壊すると懸念しているのです。つまり、現在の韓国国民の世論を無視した暴挙ではないか?と言っているわけです。
韓国国内でも世論を二分するような政権の在り方は、当然、在日コリアンにも影響を与えているでしょう。
ただ、むしろ彼らは冷淡に、対岸の火事と思っているかも知れません。
いざとなれば、日本帰化という選択肢が残されているからです。それを日本政府が受け入れるかいなかは、現時点では分かりませんが、日本の世論が影響を与えるのは間違いないでしょう。
いずれにしても、歴史に翻弄された在日コリアンは、どこに向かっていくのでしょうか?