倉沢良弦『ニュースの裏側』

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イランは戦争などしたくない

ペルシャ湾情勢の緊張は継続している。イランは、アメリカとサウジアラビアに対し、全面戦争を辞さず、と強気の発言を行なっているが、イランの本音としては戦争などしたくないというところだろう。
イエメンからサウジアラビアにミサイルとドローンの攻撃をしかけたのは、表向きはサウジアラビアとイエメンとの国境紛争があるからだ、ということになっている。
大方の予想通り、イエメンに最新鋭のドローンやミサイルを所有する財力も技術力もあるわけはないので、背後にイランがいるのは明白である。
イランに敵対するアメリカとしては、イランの核保有に反発する以上に、友好国であるサウジアラビアとイランとの確執を最も大きく懸念するところだろう。サウジアラビアとシリア政府との確執もあり、中東情勢の混迷は続くが、どこの国が発火点になるか、各国は様子見をしている状況である。
誰も、先手は打ちたくないので、イランがイエメンを使って様子見をしたのは分からないでもない。要は、イランはアメリカを交渉の席につかせたいのだ。イランの核開発を認めさせたいのだろう。イランが核開発国としてアメリカのお墨付きをもらえば、中東情勢は一気に緊張感を増す。それに猛烈に反発しているのが、イスラエルだ。
この辺りの情勢については、中東紛争そのものが起きた1960年代まで遡る必要があると共に、イスラム教国の対立の歴史も踏まえる必要がある。ただ、石油や天然ガスという地下資源に恵まれた中東諸国に、欧米が介入するのは、そのエネルギー問題が本質であることは言うまでもない。アメリカは自国でシェールガス生産が出来ているので、直接的なエネルギー問題は関係ないと言えば関係ない。グリーンランド購入の話にトランプ大統領が言及したように、アメリカは中東を見限っても他に活路を見出すことが出来る。
むしろ、そのエネルギー政策のまずさを露呈したロシアの方が、中東紛争を激化させたい思惑があるように思う。アメリカがイランに対し強行姿勢を緩めないのは、ロシアを牽制していると見るべきだ。
中東紛争が大きくなれば、原油価格は高騰する。原油価格が高騰して喜ぶのは、原油産出国である。中東を除けば、広大な地下資源を有するロシアが漁夫の利を得る。また、もう一つ、喜ぶ国がある。ベネズエラだ。ベネズエラは国内情勢が相変わらず混沌としているが、それでも原油産出国として、原油価格が高騰すれば、国の経済が潤うキッカケになる。ニコラス・マドゥロは、自分が政権を握っている間に、中東紛争が起きてほしいと思っているに違いない。それを見越してロシアともChinaとも繋がろうとしているが、中東紛争が緊張感を増している段階でロシアもChinaもベネズエラに近づくことはないだろう。アメリカの国境問題に最も大きく関わっているのが、メキシコとベネズエラだからだ。
イランに話を戻すと、今回のサウジアラビアの攻撃に対して、サウジは打つ手が一切ないことを露呈させてしまった。普通なら、反撃をすべきが、サウジにそれだけの軍事力がないことが分かったのだ。
サウジのサルマーン王子が韓国に防空設備の支援を申し出たと韓国で報じられたが、あんなものは外交儀礼でしかなく、サウジアラビアは韓国の技術はアメリカのものだということはわかっているし、実際に金を使うのはアメリカに対してだろう。韓国は、約束したではないか、と反発するかも知れないが、満足なレーダー技術も軍事衛星も無い韓国から取り入れる技術は無い。日本はイランとの友好国なので、日本はまずサウジアラビアの要請を受け入れないだろう。
仮にアメリカがイランに対する軍事的行動に出た場合、イランを支援するのはロシアだ。イランの国論はアメリカ憎しで一致しているとは言え、実際にそのようなことになると、イラン国内は膨大な難民が生まれる可能性が非常に高い。
また、原油採掘設備を攻撃されたら、イランは国の再興に長年を要することが分かっている。
イランは、振り上げた拳を下ろす、その下ろしどころを探っていると見るべきだ。