倉沢良弦『ニュースの裏側』

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原口一博議員の発言の何が危険なのか?

X(旧Twitter)にポストされている立憲民主党原口一博議員の言説は、非常に危険な思想を孕んでいると考える。

原口議員は、先日ロシアのプーチン大統領にインタビューを行ったタッカー・カールソン氏(Tucker Carlson:Tucker Carlson Network)の発言を受けて、上記のような発言をポストした。

タッカー・カールソン氏がトランプ支持者であり、来たる大統領選を睨んで発言していることは明快なのだが、それ以上に、分断の渦中にあるアメリカにおいて、保護主義政策を打ち出そうとするトランプ前大統領に世論が傾くことを狙ってのものだ。つまり、タッカー・カールソンは明らかに世論誘導を行おうとしている。

これ以上のウクライナ支援は、アメリカ経済に危機的な状況を齎すと警告しているのだ。これはあながち間違ってはいないが、一方で、ウクライナへの追加支援を決めたNATOとの足並みの乱れを想起させるものでもある。

NATO諸国は、プーチンの妄想に付き合い切れないというのが本音であり、プーチンにしてみれば東進してくるNATOを批判したいのだろうが、それがウクライナ侵攻の免罪符にはならないことは、何よりNATO入りを目指すウクライナ自身が知っている。

ソヴィエト連邦崩壊は、ウクライナがロシアとの決別を決めるに十分すぎる理由となった。ロシアとの国境を接するウクライナは、ソヴィエト連邦での地獄を、二度と再び繰り返したくないと考えたからこそ、NATO入りを宿望しているのだ。

例えばこの引用ポストのように、ロシア支持を言う日本人の中には、誤った歴史認識プーチンを信じる言説を言う者もいる。

アメリカやNATOを批判する人々の多くは、NATOを使って東進しようとしている欧米各国が、ロシアに攻め込んでいるという理解のようだが、ソヴィエト連邦に抑圧されてきた東欧諸国の苦しみは無視しているようだ。ソヴィエトを中心にした共産主義は東欧諸国の教育を崩壊させ、共産主義を教育の中心に置き、高等教育を否定してきた。つまり、共産主義が行なってきたのは、中国がやっている民族浄化北朝鮮で行われている極端な階級制度、差別、格差社会を生み出すことだった。

それがどれほど民族の誇りを汚し、民族を抑圧し、国家の否定につながるか知っている。だから、ソヴィエト連邦の再興を目指すプーチンのような指導者を忌み嫌う。プーチンなどとやっていけないから、NATOに加盟して軍事的な担保を得ようとしているのだ。プーチンウクライナ侵攻を正当化することは、そのままソヴィエト連邦の再興を正当化させることになり、プーチン歴史観を正当化することに他ならない。

これは何もロシア連邦だけの話ではない。

中東においても、イラン、イラクアフガニスタン、イエメン、ソマリアスーダンリビアで同じことが起きている。イスラム原理主義が台頭することで、これらの国々は1,000年以上、歴史を巻き戻そうとしている。つまり、近代文明を否定しているのだ。プーチンがやろうとしていることも習近平がやろうとしていることも、広義において、イスラム原理主義者と変わらない。それは歴史の否定でしかない。

このことの理解が及んでない日本人の多くが、プーチンにも理があると思い込んでいる。その認識は著しく間違っているのだ。

プーチンはろくな資金を拠出しないで、国連の常任理事国だと誇っているが、常任理事国国連憲章を無視して他国に進軍したことが問題なのだ。軍事力で他国を制圧できると思い込んでいるのは、200年前の帝国主義覇権主義であると繰り返し言ってきたが、プーチンはそこに曲解した歴史観を紐付け、屁理屈を繰り返しているに過ぎない。過去の歴史を全否定したのが国連創設であると言えなくもないが、ともあれ、先の大戦を通じて、いかなる理由であっても「戦争」を否定したのが、国連であり、国連憲章を批准した加盟国197カ国だ。これはまごうことなく真実だ。

仮にウクライナNATO加盟、EU加盟を目指したとしても、それは主権国家が自らの安全保障と経済活動の活性化を目指してのことであり、そこに他国が口を挟むことは主権侵害となる。プーチンがやっていることはまさにそこであり、ウクライナがナチ政権だとか、クリミア半島を武力により併合したり、今般の軍事侵攻で勝手に独立国だと言ってるドネツクとルハンシクは、まさにロシアの傀儡政権に他ならず、それがプーチンの言うNATOの東進を防ぐ自衛措置だとは言えない。