倉沢良弦『ニュースの裏側』

いろいろ、書いてます。お仕事のご依頼は、ryougenkurasawa@gmail.com。

トランプ大統領誕生

トランプ前大統領銃撃事件のニュースは、その衝撃と共に、一気に世界中に駆け巡った。

トランプ氏の息子Donald Trump Jrをはじめ、テッド・クルーズやマルコ・ルビオといったアメリカの名だたる共和党議員も、この画像と共に、大統領選に臨むトランプ前大統領の決意を、改めて内外に示した。

現代の民主主義の定義はアメリカが作り出したと言ってもいい。そのアメリカにおける究極の民主主義の姿が大統領選挙だ。自分たちのリーダーを国民の投票によって決定するアメリカにとって、常に国民が希求するのが、強く、正しく、世界一の国アメリカを導くリーダー像であり、その意味で、今回の銃撃事件を乗り越えたトランプはアメリカ国民が念願とする強いリーダー像の象徴となるだろう。

かつて映画『タクシードライバー』に感化されたジョン・ヒンクリーが、自分も出演女優ジョディー・フォスターのように世界に影響を与える人物になろうと、妄想の果てにレーガン元大統領暗殺を計画した事件を思い出す。

レーガン大統領暗殺未遂事件 - 事件の経緯 - わかりやすく解説 Weblio辞書 レーガン大統領暗殺未遂事件 事件の経緯 動機就任式でのレーガン大統領(左)テキサス工科大学の学生だったジョン・ヒンクリーは www.weblio.jp 

ジョン・ヒンクリーは警戒監視対象であるにも関わらず事件を引き起こし、レーガン大統領と大統領補佐官が被弾するなどしたが、なんと3週間後にレーガン大統領は公務復帰を果たした。

この事件を通じ、驚異的な回復力と、弾丸摘出手術を担当した医療チーム全員に「君たちが共和党員ならいいんだがね」とジョークを飛ばしたり、ナンシー夫人に対して「避けるのを忘れていたよ」とジョークを飛ばしたエピソードなどを通じて、アメリカ国民の心を鷲掴みにして、見事、第41代アメリカ合衆国大統領として再選を果たした。

トランプ前大統領が「Make America Great Again」とスローガンを掲げて大統領になったが、そのスローガンを最初に掲げたのが、ロナルド・レーガン元大統領だった。

それらのエピソードと今回の事件を通して、運命めいたもの、宿命めいたものを感じるのは、筆者だけだろうか?

銃撃直後、星条旗が翻る中、拳を天に突き上げたこの画像を撮ったのは、ピューリッツァー賞受賞歴のあるAPの専属カメラマンEvan Vucciらしい。恐らくこの画像も、ピューリッツァー賞の最有力候補作となるだろう。

民主主義を標榜することで、今のアメリカがアメリカたり得ている。先人は、米ドルを基軸通貨として維持することで、アメリカには無限の富が流入する仕組みを作った。つまり、格差や貧困、人種差別の問題を抱えながらのアメリカ社会ではあるが、基盤となる経済が盤石になることで、アメリカが世界一の国家であるという揺るぎない現実が存在可能にしている。

アメリカにおいて、経済力を背景にして民主主義国家たり得ている最大の要素が、民主主義政治が機能しているという点だ。アメリカは東西と南北に広く、一つの州が小国並みの土地と人口を有している。自分の州から出ることなく生涯を終える人がほとんどだし、それで成り立っている。連邦法もあるが、各州法の方がより重要とされている。各州には最高裁がそれぞれ存在し、よほどのことがない限り連邦最高裁で裁かれることはない。州知事は強力な権限を有し、州議会も単独で機能している。つまり、司法・立法・行政が完全に機能している。

そのアメリカにおいて、唯一、アメリカ国民全てで決定するのが、大統領だ。つまり国家の最高権力者、最高指導者、最高意思決定機関を国民自身が選択するのだ。

トランプは最初、共和党の中でも泡沫候補の一人とされ、知名度はあるが所詮、政治の世界で話題性を持つこと目的とされていた。ところが、共和党から立候補した16人の候補者を倒し、最終的に民主党ヒラリー・クリントンを破って、第40代アメリカ合衆国大統領となった。彼は不動産業を中心としたビジネスを拡大し成功者の仲間入りをした後、その結果、最終的に大統領に上り詰めた。

アメリカ・ハイソサエティの最高峰は合衆国大統領だ。トランプはアメリカ社会の成功者が最終的に到達する大統領に上り詰めたことで、そのキャリアを終えると考えられているし、本人もそう思っていた節がある。

トランプが大統領になることを世界のリーダーの中で唯一読んでいたのが、安倍元総理だった。各州の選挙人団を選ぶことで、その州の票数は候補者が総取りできる間接選挙方式の大統領選だが、国民は投票の際、候補者を直接選ぶため、直接選挙と言って差し支えない。予備選が進む段階で、早くから安倍元総理はトランプ勝利を見越していた節があり、2016年11月、早々にトランプ氏のスケジュールを抑え大統領就任式を前にニューヨークに電撃訪問、初の会談を行った。

トランプはビジネスマンなので、人を見る目は確かだ。人を見る目が無ければ、生き馬の目を抜くアメリカのビジネスシーンで生き残っていくことはできない。

政治の世界に挑戦したトランプにとって、大統領就任前に直接会いにきた日本のリーダーに対して、信頼できる人物だと直感で感じたに違いない。他のG7主要国のリーダーはトランプという人物を計りかねているように距離感を置いていた。

以後、トランプが先の大統領選でバイデンに敗れるまで、正に盟友と言える関係が続いた。

筆者は、政治ショーで知名度を上げようとし、上手くいけば大統領に上り詰めることが出来るかもしれないと考えていた「政治屋」のトランプを、大統領を担う「政治家」に育て上げたのが安倍晋三という不世出の宰相であると考えている。

トランプは自分が大統領になったとしても、その職務は優秀なスタッフが実務を担うものだと考えていただろう。ところが、安倍晋三は徹底的に地球儀外交の大切さ、自由で開かれたインド太平洋の重要性などを通じ、アメリカのリーダーは世界のリーダーでなければならないと、トランプを再教育したのだ。

この続きはcodocで購入