都知事選
今回の東京都知事選は、かつてない候補者数であったことに加え、離党し都知事選に出馬した蓮舫氏や地方行政を担っていた石丸氏が出馬したことで、東京都民のみならず全国から注目されることとなった。
率直に言って、筆者は今回の都知事選が、来る衆院選に影響があるとは考えていない。影響があるとすれば別の側面だと考えている。
それはズバリ、投票率だ。中でも若年層の投票率に注目している。
現時点(7月7日午後5時30分)で、全体の投票率の大まかな数字は出ているが、詳細な分析は8日以降になるだろう。だが、全体を通して投票率が上がっている背景は、間違いなく、候補者が多数に上った影響と見るべきだ。
つまり、これまで無党派層と言われていた投票行動を起こさない年齢層が投票行動を行なったと考えられる。
そして、結果はこうなった。
メディアではしきりに「石丸伸二ショック」的な表現で石丸氏を持ち上げる提灯記事が目立つが、この点、良くも悪くも今回の都知事選の焦点の一つだったと総括しておく必要があるだろう。
石丸ショック
筆者は今回の石丸現象を三点に集約して考察してみた。
①SNS現象
まず、YouTubeとTikTokで流れてくる石丸氏関連の動画は、テレビを見ない世代に大きく影響を与えたことは間違いない。今や、若い世代はオールドメディアを信用してないし、そもそも、見ない。だからこそ、なんだか小難しい言い方でそれらしいことを言う若い候補者に好感を持つのは当然だ。つまり、石丸氏の政策や公約を推しているのではなく、「なんとなく良さそう」と思って投票行動を起こした。加えて、中高年の反小池の意思表示の表れでもあった。
自民党候補者がいない以上、左翼には賛成できないが、適当な候補者がいない中、見た目が若く、シュッとしてて、舌鋒鋭く見せている候補者に託してみようという気になった中高年も多くいたのだ。それは、上記のデータを見れば一目瞭然。誰の目にも明らかだ。
②反自民の受け皿不足
今回の都知事選挙で自民党が候補者擁立を断念したのは、内閣と自民党への支持率が低下している現状を踏まえれば当然だが、では自民党が誰を推すか?となれば、小池都知事しかいない。
また、自民党東京都連としては、この苦境の中、無理をする必要もなく、小池氏が3選を目指すと決めた時点で、小池氏の当選は既定路線だったわけで、そこに無理に抗ったとて、自民党に良いことは何一つない。それであれば、潔く、勝ち馬に乗っておくのが当たり前だ。年齢的にも、小池氏4選は考えにくいので、今回自民党として小池氏を応援しておき、4選は控えてもらって、政治家人生の最後に国会議員の席を用意し花道を飾れば良いし、自民党はそう考えているだろう。
自民党は今回の都知事選挙に無理をする必要はいささかも無かったのだ。
その自民党が勝ち馬に乗ったことで、反自民の有権者の行き場が蓮舫氏に偏らなくなった。つまり、自民党は嫌だが、共産主義者などもっと嫌だと言う都民感情が、若くて一見頭が良さそうに見える石丸氏に集まったのだろう。
③立憲民主党の戦略ミス
石丸ショックがあろうがなかろうが、今回、立憲民主党は大きな戦略ミスを行ったと感じる。中でも、蓮舫氏のお友達である立憲民主党東京都連の手塚幹事長が、その前に行われた三つの衆院補選の勝利を受け、一気に首都を取りに来る為、多分東京で人気があると思われていた蓮舫氏を担いだ。
蓮舫氏は都知事になるつもりなどサラサラ無かったのだろうが、お友達からの頼みだし、先の参院選でギリギリ当選した結果を踏まえ、ここで一丁、名前を売っておこうと考えたのだろう。それに、落選したとしても、いずれ衆院解散はあるし、来年には参院選挙が控えている。どっちにしても、自分が無職になる可能性は低いと考えていたのではないか?
ましてや、仮にも自分の地元、東京である。負けるわけない。負けても、小池氏との票差がギリギリだったとすれば、それはそれで次の選挙に向けて美味しい展開になると予測していたのではないか?
しかし、そうは言っても、自民党が独自候補を擁立しないとなれば、無党派層を取り込む意味でも、無所属で出馬した方が良いし、そうは言っても立憲民主党は蓮舫を応援するだろうと見越していたのだろう。また、手塚幹事長は、蓮舫氏が出馬するにあたり、共産党への根回しも行なっていたようだ。
前回の衆院解散総選挙(令和3年)においては、立憲共産党共闘作戦が失敗し、政権交代には至らなかったが、それは戦略を間違えていただけであって、今回、共産党には衆院選以上に共産党としての戦略で動いて貰えばいい。何より、今回の都知事選で結果を残せば、来る衆院選や参院選の足がかりになることは間違いない。そう思っていたに違いない。
その結果、共産党は暴走し、共産党関連の市民団体などが、小池百合子候補の選挙妨害をおこなったり、異様な一人街宣や蓮舫赤軍なる集団まで出てきて、有権者が引くような選挙運動を展開した。
この共産党のあり方に辟易したのは、蓮舫本人もそうだが、立憲民主党幹部たちだろう。こんな政党とは二度と共闘などできないと感じた所属議員も多かったに違いない。
勿論、都知事選直後であり、情勢分析は今後詳細が出てくるだろうと思うが、仮に今回の石丸ショックをSNSの戦略ミスとかYouTubeの使い方に問題があったなどと分析するようなら、立憲民主党に未来は無い。問題の本質はそこにはない。